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長い夢のエピローグ9

 それぞれが各々の思いを抱えて任務の詳細を聞いている中、部屋の外で一人の少女はそれを不安げな面持ちで聞いていた。

 軍と対峙する任務。 
 それは今までなかった危険と隣り合わせの任務だ。詳細を教えてもらえないのは戦う力を持たない自分を巻き込むまいとの配慮であることは解っていた。だけど。

「はあ……」

 誰にも聞こえないほど小さく、リサは溜息を吐いた。
 確かに自分には力がない。だが何かしら出来ることが在るはずなのだ。自分だって仲間の助けになりたいのだ。その気持ちをレオは分かってくれているのだろうか。

 昨日の出来事も、結局誰にも話せずじまいだ。
 余計な心配をかけないためにもあのことは自分の中で留めておこうと思っている。だけど同時に、誰かにそれを聞いてほしい。縋りたいという思いもあった。

「今そんなこと言ったって、皆を困らせるだけじゃない。……皆の足を引っ張るのだけは、嫌」

 ぶんぶんと首を振ってわき上がる思考を遮る。
 今は皆のために。話は聞けなくとも自分にできることをしよう。そう思って、それでもやはり何が起こっているのかは知りたくて、結果盗み聞きという形である程度の事情を理解することになったのだった。

「潜入調査か……」

 今まで自分が作り出した発明品の中で今回の任務に役立ちそうなものはあっただろうか。
 そう思考を巡らせているところに突然声が降ってきた。

「盗み聞きなんて、感心しないわね」

「ひゃっ!?」

 自分以外の誰かがいるだなんて考えてもいなかった。声とともに驚いたリサの肩が跳ねる。

「ミ、ミリカさん……おどかさないでくださいよ」

 声の主はミリカだった。
 ふふ、と薄い唇に笑みをかたどるとまるで気配を殺しているかのように静かにこちらへと近づいてくる。

 正直、彼女のことはあまり得意ではない。
 情報屋と繋がりを持つレオの知り合い、という情報以外は一切の素性がわからない。情報屋という存在自体謎めいたものだが、それと関わりを持つが故か彼女自身も不透明でどこかとらえがたい印象があった。その不透明さ、つかめない浮遊したような感覚が妙な居心地の悪さを感じさせるのだ。

「軍との関わり……これから大変なことになりそうね」

「そうですね」

 どこまでも見透かされそうなその瞳に自分の心を読まれそうで、リサはできるだけ目を合わせないよう視線を逸らす。

「心配?」

「そりゃあ、心配ですよ。皆が危険な目にあうかもしれないんですから」
 
「そうよね、当然よね」

 再び笑みを浮かべるミリカ。彼女の言葉の真意が分からずリサは怪訝に眉をひそめる。

「じゃあ、仲間のことだけじゃなくあなた自身のことはどうかしら?」

「!?」

 何を言っているのか分からない。
 リサは咄嗟にミリカの方を見上げ目を見開く。交錯するミリカの奇妙なまでに透明な視線がリサの鼓動を早くする。



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