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長い夢のエピローグ4

「立場上、軍との関係がややこしくなるような事態は避けたいのだけど。でも、コアを持つ生命体に彼らが関わってるなら……放ってくのもねぇ」

「はい。俺たちだけの考えで勝手に動くのは危険だと思って、それでまず、レオさんの判断にゆだねてみようかと」

「うーん。そうねえ。君たちはどうしたい?」

「俺たちっすか?」

「そう。ダズの言う通り、軍が絡んでくるとなると今までとは少し違った問題になる。深入りすることで後戻りできなくなるかもしれない。でも、さ。ここまで知っちゃったんだ。気にならない?」

「まあ、気になるけど……」

「そうだよね。俺も軍が何をしようとしているのか、興味深いんだ。だけど、何度も言うけどこれは危険な橋だ。渡るかどうかは、実際に踏み込む君たちに決めてほしい」

 レオの言葉に部屋の空気はより緊迫を増す。
 この瞬間の決断が、今後の自分たちを大きく左右するかもしれないのだ。軽率な判断は下せない。ダズの手のひらに汗が滲む。
 
「俺は進む。軍が絡んでようがなんだろうが、関係ない」

 そう言い放ったのはディルだった。その言葉には何の迷いも躊躇いもない。

「ディル……!? 本当にわかってるのか? 軍と敵対するかもしれない、この国自体を敵に回すかもしれないんだぞ……?」

 あまりにも鮮やかな決断に、ダズは驚きを隠せない。慎重に構えている自分がまるで馬鹿であるかのようだ。

「それがなんだ。敵となったら倒せばいい」

「お前、本気で言ってるのか……?」

 国を敵に回す、ということの意味を本当に理解しているのだろうか。
 一国を相手にしてそれを倒すと、平然と言ってのける少年の瞳には何の迷いも疑問の色も見えない。10人にも満たない小さな集団が、ひとつの軍事国家を前に勝てる可能性などあるわけがない。そう考えるのが普通である。そしてダズはその普通の感覚の持ち主であった。ゆえに、迷いもなく国を倒すと言ってしまえるなんて、その思考回路が理解できない。そんなもの、本当にそれだけの力を有する者か、ただの馬鹿の考えだ。この場合もちろん後者。だが現実、彼の周りにはそんな馬鹿があふれていた。

「それもそうだな!」

 声高々に賛同したのはジャルの声。
 納得し、吹っ切れたようなその表情にダズはさらに言葉を失う。

「敵対したら倒しゃいいんだよな! 正論すぎて考えてたのが馬鹿みてえだ。俺もこのままいくぜ!」

「……お前ら、本気か……?」

「まあ何とかなんだろ。俺たち強ええし。軍相手だって負けねえって。それに、よく考えたら俺顔見られてたんだった。今更引けねえわな。あ、でもハンターってことはばれてねえと思うぞ」

「……はあ!? 顔を見られてるって……そんな大事なことをなぜ今まで……はあ、いろいろ考えてる俺が馬鹿みたいだよ。本当に」

 一国を前にしても動じない二人の姿勢に、ダズは呆れを通り越してもはや驚嘆だ。不思議とこちらまで謎の自信がわいてくる。もちろん根拠も何もない自信なのだが、それでもダズを決心させるには十分だった。



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