長い夢のエピローグ3 相変わらず汚い部屋だ。 ドアを開いたその瞬間彼らを出迎えた乱雑した風景に、ディルは内心毒づいた。 「お、おかえりー」 ドアの音に気付いたのか、帽子を被り直したレオの間の抜けた声がした。 部屋にいるのは彼の姿だけ、先日からの来客は今はいないようだった。 「ただいま戻りました」 レオを前にしてか、報告の内容からか、いつもより緊張した声でダズが挨拶する。 「うん、お疲れ様。三人そろって来るってことは、終了の報告のほかに何かあったってことだね」 「その通りです。さすがレオさん話が早い」 「今回の任務を経て、分かったことがあります。あと、気になった点もいくつか……」 ダズを中心に、任務での出来事をレオに報告する。 コアを持つ生物の事、それらを従える謎の少女、そして軍との関連性。それぞれが見てきた事を伝え、共有する。 「……なるほどねぇ」 話を聞き終えて、レオがふむふむとうなずく。 「なんか、ややこしくなってきたね」 その声とともに、レオの隣にメルベルが現れる。姿を消していたものの、話をずっとそばで伺っていたようだ。 「メル、ちゃんと記憶した?」 「ばっちり」 そう言うとメルベルはにっこりと笑い宙を回転する。 二人のやり取りに三人は疑問符を浮かべていたが、それを見たレオが指を立てて補足する。 「メルベルの不思議天使能力の一つ、だよ」 「なあにその言い方? まあいいけど、流れる時間の一部を切り取って保存したの。簡単に言えば、今のやり取りをいつでもみれるように記録したってことね」 「へえ、メルベルってそんなこともできんのか。便利だな」 「まあね」 目を丸くするジャルに、メルベルは得意げだ。 「ただ飛んでるだけのおまけじゃなかったんだな」 「おまけとは失礼ね、ディル!」 「まあまあ。とはいってもメルベルの力は俺がいないと使えないんだけどね。つまり一番すごいのは俺なんだよねー」 「レオはほとんど何もしてないじゃないの」 「はいはい、本題に戻りましょうよ……」 このままではいつまでも脱線したまま終わらなそうなやり取りを、ダズはあきれつつも収束させる。真面目な話をしていたはずなのに、どうしてこうなった。そんな思いが声色から滲み出る。 なにはともあれ、話は本題に戻る。 「それにしても、軍ねぇ……」 先ほどの緩んだ雰囲気から一変、レオの表情は真面目なものとなる。無造作に伸ばされた髭を軽く撫で、何かを考えているようだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |