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長い夢のエピローグ1

 闇の中に灯ひとつ、響く少女の無垢な歌声。
 ひたひたという裸足の足音が歌に合わせた小気味よいリズムで進む。

「おかえり」

 どこからか聞こえてきたその声に、少女は自らの金髪を嬉しそうに揺らした。

「だだいま、ネオ!」

 無邪気な笑顔。まるで親を前にした小さな子供のようなそれだった。
 少女はそのまま声の主の下へと駆け寄り、飛びつくようにその肩に手をまわした。

 闇に溶けるような長い漆黒を纏った男は自分へと抱きつく少女の頭を優しく撫で、同じように闇色の瞳を細めた。

「無事に接触を果たせたようだね。ニナ。よくやった」

「えへへ」

 男の言葉に、ニナは嬉しそう頬を染める。

「久方ぶりの活動で消耗しただろう。しばらくは、休止するといい」

 柔らかな手つきで男が少女の髪をなぞると、まるで糸が切れたかのようにニナはそのまま彼の腕に抱かれ眠りにつく。

 腕の中で静かに眠る少女の髪に一度だけ指を通すと、男は目の前に広がる闇を、広漠とした漆黒を憂うように見つめた。
 
 
 それぞれ、各々の動きが始まっているようだ。自分がなすべきこと、それを実行する時も近づいている。
  
「あれから、ずいぶんと時間が経ってしまった……」

 計画は進んでいる。少々邪魔が入ってしまったが、それも時期に取り除けるだろう。

「今度こそ、私は」

 誰に聞かれるでもない、微かな呟き。
 闇に向けられた男の瞳には黒よりも深い、決意があった。


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