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はじまりの来訪13
「うん。最近村で多発している事件を解決してほしいって。詳しい話は直接会ってからとのことだから、村長さんに会いに行かなきゃなんだけど……」

そこまで言って、ディーナは口を紡いでしまった。
どうしたのかと聞こうと思ったが、その前にディーナが口を開いた。

「いや、恥ずかしいことに……この森、複雑でしょ?だから迷っちゃって。さらにディルともはぐれちゃうし、どうしようかと思ってたのよ」

恥ずかしそうに言うディーナだが、実のところこの森はそれほど複雑ではない。入口から村までは一本道が通っているし、所々に案内板も置いてある。確かに一歩道から外れてしまえば初めてこの森に入る人にとっては複雑、かもしれない。普通に歩いていれば道を外れることはないのだが、この際何も言うまい。

「そうなんですか。確かに、分かりにくいですよね。うん」

猛獣と対峙していた時や先程の話から抱かれる物騒な印象からはかけ離れた、少女の人間らしい一面に不思議な安堵感と親近感がわいてきた。すると、自然に笑いが込み上げてくる。

「そう言いながら、なんで笑ってるのよ」

頬を赤らめてこちらを軽く睨んでくるディーナ。ついつい漏れてしまう笑いをこらえながら、ベルトは提案をする。

「はは、ごめんなさい……。あ、そうだ。何なら俺が村まで案内しますよ」

「本当!?」

「はい。助けてくれたお礼です」

「ありがとう、ベルト君」

そう言って笑顔を向けるディーナ。
それに笑顔で応えるベルトの彼女に対しての警戒心は完全に消えていた。


「助かったわ。あ、私ディルにもこのこと伝えてくるね。その、大丈夫?」

先程のことを思ってだろう。ディーナの問いにベルトは「はい」とだけ答えた。
大丈夫かと言われれば、全く大丈夫ではないのだが。まぁ、何とかなるだろう。今日一日で、自分はかなりの順応性と図太い神経を身に付けた。そんな気がする。
すっかり暗くなった空の、満天の星を見上げ、ベルトはそう思った。この先に彼を待ち受ける、最大の難関の存在を忘れて。



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