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分からず屋(一モン)
今日は久しぶりに一休先輩と会った。しばらく、お互いの部活が忙しくて会えなかったのだ。

そして今、一休先輩の部屋にお邪魔している俺は、ベッドを背もたれにして座っている。
一休先輩はそんな俺の前に膝をついた。


(…一休先輩?)


ついさっきまで普通に話していたのにどうしたのか。訳が分からず顔をしかめる。


「いいか…モン太」


一休先輩の真剣な眼差しにごくりと唾を飲み込む。何を言おうとしているのだろうか。

俺がじっと待っていると、一休先輩は一度、目を伏せてから俺を見つめた。


「俺たちは高校生だ」


(え?)

なにを言うかと思ったら、そんな分かりきったことか。
思わずポカンと一休先輩を見る。一休先輩は何を言おうとしているのか。真意は他にあるのだろうか。
残念ながら俺にそれを汲み取れというのは無茶だ。


「俺も、お前も健全な男子高校生だ」


一休先輩は俺の肩をがっしり掴んだ。
一休先輩の目が俺を見つめる。逸らしたら逸らしたで気まずくなりそうだから、仕方なく一休先輩の目に映る自分を見ることにした。

「そうだよな?」
「ッスね」


執拗な確認にコクリと頷く。一休先輩は少しホッとしたようで、つり上げていた眉を戻した。


「よし、なら、俺のこの気持ちも分かってくれるよな」


一休先輩は肩を掴む手に力を入れた。俺は思わずその気迫におされそうになる。


「…多分?」


俺のその答えに満足しなかったのか、一休先輩は「多分じゃ駄目なんだよ」と溜め息混じりに行った。

(一休先輩は何がしたいんだ…わっかんねぇ)

訝しげに一休先輩を見れば、俺を不安げに見ている。これは確実な返事をしたほうがいいのだろう。

「じゃあ、絶対…」


その答えに一休先輩は深く頷いた。掴まれた肩が熱い。一休先輩の手が熱すぎるのだ。


(あ、もしかして先輩…)


「よし、モン太、俺と「エロ本でも買いに行くんスか?」…」


俺の推理は見事に的外れだったらしく、一休先輩は溜め息を深くついた。
肩から手がゆっくりと離れていく。
一休先輩は大きく深呼吸をして、仕切り直しだと言わんばかりに俺の前に正座した。


「…モン太、本当にお前は色々と健全だな」

(健全…か?)

多分、部活動にいそしんでいるのだから、男子高校生として健全なんだろう。


「そう考えると俺は、不健全な男子高校生なのかもしれねぇ…」


一休先輩だってアメフトに熱心だ。不健全な筈がない。否定しようと思うが上手く言葉が出てこない。

そうこうしているうちに一休先輩は伏し目がちにぼそりと呟いた。



「最近、俺、駄目なんだよ…」


(…一休先輩が)

一休先輩が弱気だ。
一休先輩が俺に弱音を吐いている。信じられない。あんなにプライドが高い一休先輩が後輩の俺に弱い部分を見せるなんて。
思いがけない事態に口が乾く。潤いが欲しい。

(くそ、カルピス飲み干しちまった)

横目に空になったコップを見て、内心舌打ちする。
一休先輩、練習が上手くいかないのだろうか。
でもキャッチで相談されても俺に何が教えられるというのか。



「キャッチは、練習あるのみッスよ」




少しの間。
一休先輩がふらりとうなだれる。


「馬鹿モン太!」


直後、一休先輩の手刀が綺麗に頭にヒットする。

「いでっ…じゃあなんなんすか!」

頭を押さえつつ声を荒げて尋ねると、一休先輩は意気消沈したみたいに肩を落としていた。

(俺が悪いのか?)

ちょっと理不尽だと思いつつ一休先輩を気遣うように肩に手を置く。
一休先輩はぴくりと反応してくれた。

(良かった…無反応が一番辛いからまだマシだな)


一休先輩は床に力なく落ちていた手を、俺の手に重ねた。
相変わらずその手は熱がある。
そして一休先輩は力いっぱい俺の手を引いた。



「俺はお前にムラムラするんだ」


一休先輩の顔を近くで眺めながら背中にベッドが当たるのを感じた。






(…嘘ッスよね)
(今も微妙にムラムラしてる)





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思春期な一休とまだ思春期になれてないモン太。というかもう一休はモヤモヤ悶々ムラムラしてたらいい。



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あきゅろす。
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