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無意識(一→モン)
いやー、皆さんかわいいっすね!と1人の先輩がだらしない笑顔を浮かべて言った。

向かいに座る彼女たちはそれぞれ恥ずかしそうにはにかんだり笑ったり否定したりと可愛い反応だ。

もし阿含さんが女の子でそんなことを言われてもこんな可愛い反応はしないだろう。

「当たり前だろーがカス、ブス男に興味ねぇ」とか言うに違いない。怖い。


そんなくだらない事を考えている俺の意識はほとんど女の子に向いていなかった。

たくさんの女の子とカラオケボックスという密室にいるというのに、合コンに自分から進んで参加したのに、だ。


男子校に通う男子にとって女の子と関わり合う貴重な場、合コン。ちなみに俺は今日が初合コンである。

勿論、前日はかすかな期待と不安に胸を弾ませていた。が、いざ女の子を前にしてみると想像していたより胸のときめきがない。


俺は合コンに期待しすぎていたのだろうかとかなんとか考えているうちに、先輩たちは好みの女の子を見つけたらしく話し込んでいる。

合コンに来たからには女の子と話さなければ。ちらっと向かいを見れば、一人取り残されたように座っている女の子が見えた。

ああ、確実に俺のせいだ。


どうすればいいのか思案していると女の子とばっちり目があった。これはもう話かけざるを得ない。

腹をくくって俺はジュースを手にその女の子の横に移動した。しかし。


「…」


何を話せばいいんだろう。普段女の子と話すことなんてめったにないから、わからない。


「こんにちは」?
「初めまして」?
「名前なんていうの」?


少し俯いて考えていると女の子が「あの、私雷門ひなたっていいます!」と言った。



らいも、ん?


思わず繰り返し呟けば女の子はコクコクと頷く。

「俺は細川一休、…あと、知り合いに雷門ってやついるよ」

そう言ってから女の子を改めてみると、どうしてなかなか、モン太に似てる。

いや、別にこの子は猿みたいな顔してないし可愛い感じの顔してるんだけど、ちょっと茶色の短めの髪とかでかい目とか、雰囲気とか。モン太にどことなく似ている。

もしやこの女の子も初合コンなんじゃないだろうか。
モン太に似ているというだけで俺はその子が後輩のような感覚に陥った。


「その後輩はモン太、ってやつなんだ」
「もんた、さんですか」
「そ、本当に猿みたいな奴で、でもキャッチの腕は確かなんだよなぁ」
「キャッチ…?」

不思議そうに目をくりくりさせている様子がまたもやモン太を彷彿とさせる。

「…俺アメフトしてるんだ、ここにいる先輩たちもみんなアメフト部」
「知らなかった、です」

感心したように周りをキョロキョロと見る様子もどことなくモン太みたいだ。

「だからみなさんたくましいんですね!」
「…え」


ぴと、と微かに俺の腕に触れたひなたちゃんの手。思わず固まった。


「あ、す、すいません!突然触っちゃって」
「い、いや鬼大丈夫っすから」


冷静を装いながら俺はドリンクバーに走った。





「…喝!」

ドアの前で気持ちを静めてから部屋に戻ると、俺はなんとかひなたちゃんとの会話を楽しむことが出来たし、メルアドも交換できた。

今回はモン太に感謝だな、と思いながら寮に帰った。




ごろん、と床に寝っ転がりながら今日の合コンを振り返る。久しぶりに女の子というものの素晴らしさを思い出した。

柔らかくて、いいにおいがして、きらきらしてる。

俺たち男とは違う可愛さだ。


そうだ、俺は女の子が好きだったんだ。最近は俺ってそっちのけがあるのかもと思いかけていたが、それはあまりにも女の子と接する機会が少なすぎたためだ、そうに違いない。

実は合コンに自主的に参加したのもその疑いをぬぐい去りたかったからだ。目的は達成された。携帯のアドレス帳に並ぶ二つの雷門を満足げに眺めた。


なんだか「普通の男」に戻れたことが嬉しくてその辺に転がっていたダンベルをぶんぶん動かした。


ざまぁみろモン太、と何故か笑いながら。






______

実は女の子好きなのが確認できなんじゃなくてモン太が好きなのを確認したのに、それに気づかない一休。勝手に女の子出してきてすいません。

女の子で惹かれた部分=モン太に関して好きな所

だと萌えます。無意識にもうモン太大好きになっている一休。それに気づいたときの悶え!




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