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文章
男子高校生の悩み(戸黒)
俺の目の前に現れた小柄な女子。ピンクのゴムで長い髪を2つくくりにしている。

「黒木くん」

その女子は俺の名前を少し恥ずかしそうに呼んだ。

(も、もしかして告白か…!?)

思いがけない展開に自分でも心臓がうるさくなったのが分かる。その女子は目もぱっちりしていて可愛い顔をしている。告白されたら即OKだ。

(遂に俺にも人生のモテ期が来たか…)

なんてしみじみと思いつつ、女子の次に来るべき「黒木くん大好き」という言葉を待っていた。
が、その女子が言った言葉は予想外のもの。

「あの、十文字くん呼んでくれる?」

(…は?)

俺はにやついた顔のまま停止した。女子を改めて見る。これは確実に告白しようとしている顔だ。間違いねぇ。
そしてこの女子は十文字を呼べと言った。

そこで全てが繋がった。

(なんだ、告白されんのは十文字か…十文字…ハァァァァァ!?)

俺は勢いよく、俺の後方で机に足をのせてくつろいでいる十文字に振り返った。

「おい…十文字、呼ばれてんぞ」

絞り出すように女子を指差して言えば、一瞬驚いたように目を丸くした十文字は、心底面倒くさそうにゆっくりと立ち上がった。
「…分かった」


そうして十文字は女子に腕を引かれながら教室を出て行った。

(…何だよ…十文字かよ…ぬか喜びしちまった…)





傷心した俺はよろよろとトガが座っている席の隣に腰を下ろした。トガは相変わらず漫画をもくもくと読んでいる。

「…なぁトガ…」
「おー」

俺は机にぐったりとうななだれてさっきのことを振り返った。

(勝手に妄想してマジ恥ずかしすぎんだろ俺…)

それにしても十文字ばかりあんなに女子に人気があるのだろうか。
確かに顔はかっこいい。性格もいい。
だが、そんなに女子と仲がいい訳でもないし、気さくに話しかけられる雰囲気な訳でもない。

というかどちらかというと俺の方が女子と話すことは多いし、ノリもいいと思う。

(ますます納得いかねぇ)


そうだ、いっそのことトガに聞いてみよう。こういうことは意外とトガが詳しいはずだ。


「なぁトガ、何で十文字だけあんなにモテるんだ?」
「おー」
「俺だってモテたい!モテたいのにモテねぇ」
「おー」


…何なんだ。
トガまで女子のように俺を無視するようになってしまったのか。さっきから話しかけているのにおーおーしか言わない。

「…おいトガ、聞いてんのかよ」
「聞いてる聞いてる」

そういいながらもトガの手はページを捲るのを止めないし、目は俺を見ない。

「じゃあなんか言えよ!」
「なんか」
「ぶ…おま、小学生かよ」

思わず笑ってしまった俺は、慌て眉間にしわを作った。トガはフー…、とひとつ溜め息をついて(赤羽かよ)から漫画を閉じて、大事そうに鞄に直した。それからトガが俺に向き直ったせいで俺も少し背筋を伸ばす。


「いいじゃねぇか、十文字がモテたって」


頬杖をつきながら心底どうでもいいことのように言うトガに思わず文句を言おうと立ち上がる。

「何か悪いか?」
「ぐ…、」

悪くない。別に十文字は悪くない。むしろ俺が悪い、と思ったからしぶしぶ椅子に座り直す。

「それに十文字がモテようがモテなかろうがお前がモテるモテないには一切関係ないしな」


(…分かってるよそんなこと!)

でもどうしようもないから苛々するんだ。
だって女子にモテたいと思うのは純粋な男子高校生の欲求。

だからトガに相談したのに何の解決にもならない。

「…なんだよ!トガはモテたくないのかよ!」

俺が詰め寄って聞くと、トガは眉をひそめてまた溜め息をついた。


「別に、好きな奴に好かれればいい」

「…何だよその、正論はっ!」
「正論だろ」


トガのにやりとした笑みにムカムカする。十文字もトガもなんなんだ。なんでこんな二人とつるんでいるんだ。なんでこんなに…!

「ちくしょー!なんだってんだー!!」


「まぁ落ち着け」

トガがコーヒー牛乳を差し出しながらそう俺をなだめる。

「お前は俺らに好かれてる、それじゃ不満か?」

そう言われて、俺は少し考えた。

(俺はトガにも十文字にも好かれてる…も、モテモテ…?)

「まぁ女子に好かれてるか分かんねぇけどよ」

(この野郎…!)

思わずトガの漫画を破ってやろうかと思った。




(…どうだった?)
(…なんか、告白された)
(あああやっぱムカつく!)
(おわっ、どうしたんだよ黒木…)
(ただのアホだ、ほっとけ)
(ぉ、おう…)





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女子にモテたい黒木(モテない)と女子にモテたい訳ではない十文字(雪さんが気になる)と女子にモテたい訳でないトガ(黒木にモテたい)…で私の中のハァハァ三兄弟は成り立ってます^^

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あきゅろす。
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