文章
俺は女の子が好きなんだ(一モン)
俺は女の子が好きだ。
俺はモン太と訪れた喫茶店でオムレツを食べながら心の中でそう唱えた。
「お前、まもりさんが好きか」
俺は女の子が好きだ。
そしてまもりさんも好きだ。だって可愛い。
それはさておき俺の目の前にいるコイツ、モン太は俺の質問に呆気にとられたようでポカンとしている。
(耳からじわじわ赤くなっていってんな)
なんとも分かりやすいモン太に、自分も分かりやすい奴だったことを思い出す。
「えぇっと…は…いやっ別にそんなこともあるというかないっす!」
「その必死さが逆にウザいぞ」
はぁー…と溜め息を一つ。
頬杖をつきながらオムレツをスプーンでつつき、モン太の食べかけのカレーを睨む。
(俺は女の子が好きだ。だって女の子は鬼可愛い)
「聞いたの一休先輩っしょ…」
(なのに…)
「もー今日はなんスか?」
なのにだ。こんな猿みたいな奴に俺は惚れているかもしれないのだ。
女の子みたいに柔らかくもないし、可愛くもないし、何より猿だ。
(つーかそれより男だ)
なんで俺は男と二人で喫茶店で仲良く昼飯を食ってるんだ。
(もし本当に惚れてるとしたら自分が情けねー)
だから、俺はこうして女の子が好きだということを確かめてはこの気分をどうにかしようとしているのだ。
「確かにまもりさんは鬼可愛いな…」
俺がぽつりと呟いた言葉にモン太がわざとらしいぐらいに目を見開いた。
「あ、え、もしかして一休先輩もまもりさんが…!?」
モン太は焦って俺の方に詰め寄ったせいでカレーの中にスプーンが落下した。
(あーあ、拾うの面倒くさいぞ)
「一休先輩、も?」
「あ」
「馬鹿だな、お前」
呆れて言葉もでない。
(馬鹿だ。こんな馬鹿のせいで悩んでるのが鬼気にくわない)
「カマかけたんスか!」
「たまたまだ、たまたま」
まぁ、かけたと言えばかけた。へなへなと座り直すモン太を眺める。
「あぁー…!」
「ま、黙っててやるから安心しろよ」
肩をぽんと叩けばモン太はおずおずと、上目づかいで俺を見た。
「…本当っスか」
「…おお」
思わずそんな顔で俺を見るなと言いたくなったが耐えた。
(くそっ…何なんだよこれ!)
「頼みましたよ!」
モン太はまた詰め寄り、俺に念押しした。
分かった分かったといいながら残り少ないジュースを飲む。モン太の恨めしげな視線を感じるが、あえてスルーしておく。
(勝手に引っかかったのはモン太だしな)
「いいよなぁ泥門…女の子多くて」
俺はぼんやりそんなことを言う。
(まもりさんに瀧ちゃん…美しいのと可愛いの)
「つっても二人ッスよ」
「ばっかお前、二人でも十分だろ!贅沢いうな」
俺はモン太がジュースを飲んでいるのを見計らってコップの底をはたく。モン太は見事にジュースをかぶり、噴きだし、咳き込んだ。ざまぁみろ。
「ごほっ、何、するんスか!」
「お前が悪い」
(モン太…ジュースでべたべただな)
…俺のせいで。
そう思うがハンカチを貸してやるような親切はしない。モン太なんかジュースでべたべたになってろ。
「二人とも鬼可愛いじゃねーか」
「はは、げほ、飢えてるッスね…」
モン太はタオルで顔を拭きながらそう言った。
「さては馬鹿にしてんなお前」
「いやいや滅相もないッスよ」
そう言って笑うモン太の頭を軽く叩けば、俺の手が微妙にべたついた。
くそ、この手のべたつきみたいにモン太へのこの気持ちも洗い流せたらいいのに!
(男子校そんなになのか)
(女の子が好きなはず、だ!)
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!