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風呂上がりの君に夢中(一モン一)
風呂から出ると俺の後輩がベッドに座って俺を見つめていた。

それはもう、じっと。



「…モン太」



俺パンツ一丁なんだが。



そう呟いてもモン太の耳には入っていないようだった。その人よりでかい耳はなんのためについてんだ。


「…んだよ、ジロジロ見んな」

眉間にしわを寄せて言えば、モン太はやっと俺の顔のほうに目をやった。

「いいじゃないッスか、減るもんじゃないし」
「減る、なんか減る」


髪を拭きながらベッドに向かえば、それに合わせてモン太の瞳がゆっくり動く。それを横目に俺は枕元の携帯を手にとった。

「いや、いい体だなーって」
「別に…スポーツしてたらこんなもんだろ」


携帯を見ると、山伏先輩からメールが来ていた。明日の部活がなくなったという内容だった。
どうせ雲水さんは自主トレするんだろうなと頭の片隅で思いながら了解っす、と返信する。

送信されたことを確認してから携帯を閉じれば、それを見計らっていたようにモン太はまた口を開いた。

「でもきれいッスよ」


思わず携帯を落としてしまった。落下地点がベッドの上で良かったと思いながらモン太に振り向く。

「おま、えなぁ…きれいって!」

馬鹿か!言われても嬉しくねーよ!とチョップをかませば、俺の髪から水滴が落ちた。

「…」

そういえばなんだかんだでまだ寝間着を着ていなかったのか。

まったく、これも全部モン太のせいだ。






「本当いい体してるっスねー」

タンスを漁っていると後ろからそう声がして、思わずモン太が手を伸ばしていないか確認してしまった。

「…触んなよ」
「触りませんよ」

モン太はきちんとベッドに座っていた。俺はまた寝間着を探す。
モン太に背中を向けながら、俺は少し笑っていた。さっきからモン太が緊張してるのに俺は気づいている。
いつも以上にそわそわしていなさすぎて隠そうとしているのがバレバレだったのだ。


(つまり思春期か)


モン太と付き合い始めて早2ヶ月。そろそろコトに及んでもいい頃だと俺は思う。というか阿含さんに言わせれば遅すぎると思う。

まぁ俺もモン太も阿含さんに比べると恋愛事に関して不器用で奥手だからこれぐらいがちょうどいい。

俺だって好きなやつとなら色々したいと思う。抱き合ったり、キスしたり。1ヶ月経ってもキスの一つもなかったときは別れてやろうかと思った。

(それで痺れを切らした俺からキスしたんだよな…)


キスした瞬間俺が我にかえってモン太と離れると、モン太は顔を真っ赤にして、悔しそうに、それでいて意外そうに「…先輩性格悪いっすね」と呟いたのだ。

そんな懐かしい思い出に浸っているといきなり後ろから手を引かれ、ぐるりと回転した。

つまり、前にモン太、後ろにタンス。


(…お前っ…!)

お前、少女漫画読んで研究したんじゃねーだろうな…!と言いたくなるぐらいドラマチックな状況に置かれた俺。
前にいるのが鬼可愛い女の子なら俺も慌てるなり赤くなるなりできたんだが、なんせ相手は男でモン太だ。


「なんだよ、えらく積極的だな」


そう言うしかなかった。モン太から触れてくるのは珍しく、心のどこかでそれを喜んでいる俺がいたのだ。

それにモン太がいつかは触れてくるだろうと思っていたから、別段驚きはしなかった。それがモン太には意外だったらしく、強気だった目に戸惑いの色が見えた。

「…誘ってんのか」
「…誘ってないッス。先輩こそ誘ってきたでしょう」

その後にはあんなかっこで出てきて、と続くのだろうか。モン太は俺をじっと上目使いで見つめたままそう言った。俺の手首を掴む手は微かに震えている。


(…これじゃどっちが誘ってんのかほんとに分かんねぇな)


心の中でそう溜め息をついた俺は足でタンスを閉めて、もたれた。


「…俺はただ風呂に入っただけだ」
「それが誘ってるっていうんスよ」
「じゃあお前は俺に風呂入るなっていうのか」


モン太は苛々しているのか「ちょっと黙ってくれませんか」と言った。

「悪いな、せっかくの雰囲気壊して」
「いい加減折れてくださいよ、一休先輩は先輩でしょう」
「お前こそ早く折れろよ」

俺がそう言うと、モン太は面白いほどはっきりと動きを止めた。鬼動揺してるのが分かる。


「…どういう意味っすか?」
「早く折れて、キスしてからのその他諸々にまで及んでいいですか、って聞けよ、って意味だ」
「…ほんと先輩性格悪いっすね」


(あ…)


いつぞや聞いたことがある台詞と共に、痺れをきらしたのかモン太は俺の腕を引っ張ってベッドに放り投げた。


「いってー鬼いてぇ!」

打った腰を抑えながら呻いていると、その上にモン太が現れた。


「先輩男でしょう。ちょっとぐらい我慢してください」


お前は男だろう。ちょっとぐらい相手の体を思いやれ。

そう言いたかったがこの期を逃すのは俺的にも惜しかったので、「はいはい」とモン太の口に俺の口を近づけた。
その時、俺の携帯がちかちかと光ったのが見えた。きっと山伏先輩だろう。





…しばらくは返信できそうにない。






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モン一、のつもりで書き始めたのですが最終的に一モン一ぐらいになってしまいました。
モン太より三枚上手ぐらいの一休もおいしいです。一休の筋肉や体のバランスを考えると、モン太よりがっしり、というか完成した感じだといいなーと思います。

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あきゅろす。
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