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宣戦布告をした日(チューモン)
モン太先輩と俺の間で揺れてる、「先輩と後輩」って関係。
でも、最近ちょっとだけ、ちょっとだけだけど、少し希望が見えたんです。
その理由は、先輩、モン太先輩と一休さんも同じように「先輩と後輩」って関係だから、なんです。
ただそれだけで希望を持っちゃうなんて、一休さんに聞かれたら笑われちゃうかもしれないっすね。
でもモン太先輩。俺には、「あきらめないため」には十分な理由だったんですよ。
「モン太、先輩」
後輩という立場から脱却したくても、モン太先輩という呼び名を辞めるわけにはいかない。
だって、モン太先輩は先輩だから。
…でも、モン太って呼び捨てにしてみたいと思うこともある。
モン太、そう俺が呼びかけたら、モン太は俺を振り返って。
「…なんて、無理か」
(無理に決まってる)
はぁ、とため息をつく。
俺は自分の部屋に篭り、くだらないことを考えてはため息をついている。
実は昨日、恋愛経験が豊富だっていう黒木先輩にそれとなく相談してみた。
俺の話が進むにつれて黒木先輩は笑い出した。
(な、何故…?)
最初は小さく、最後には大爆笑だ。
背中をバンバン叩かれたと思ったら、黒木先輩はにやりと笑って「それが恋愛の醍醐味だろ!」と言った。
「お前が言うな」と戸叶先輩に漫画で叩かれている黒木先輩を少し見守ってから、部室を出た。
(悩むのが恋愛の醍醐味…)
そう思えるほど俺は大人じゃない。分かったのは黒木先輩が大人だということぐらいだ。
俺はこれが恋愛の醍醐味だと思わない。苦しいだけだ。切ないだけだ。その上、片思いに年上に恋敵なんて青春ドラマにしてみれば整いすぎた関係だけれど、俺はモン太先輩に好きだと言ってもらいたい。
泣いて、くやしい思いをしながら一休さんとモン太先輩を眺めるのだけはお断りだ。
「モン、太…」
「どうかしたか?」
ぼそりとつぶやいた独り言にまさか返事があろうとは。後ろからひょっこり現れたのはモン太先輩その人だった。
びっくり顔の俺に用があった訳ではないと分かったらしい。
「や、なんもねーんならいいんだけどよ」
「すすすすすいませんっす!!」
慌てて頭を下げると、いいんだとモン太先輩は頭をかいた。
「名前で呼ばれたから、セナかと思ったらお前だったから」
「あ、先輩、すいません!」
謝る俺にモン太先輩は違う違うと否定した。
「いいんだ、確かに皆の前だと先輩はいるけどよ、俺はあんまり、そういうの得意じゃねぇんだ」
そう言って苦笑いをするモン太先輩は俺なんかよりもっと「先輩と後輩」の関係に慣れているように思えた。
「俺、後輩って立場に慣れってっから、先輩ってちょっとこそばゆいんだよなー」とモン太先輩は照れたようにはにかんだ。
その表情が、その、かわいかった。
「だから、別にこういうときは先輩とかいらねぇからな」
へへ、と笑った先輩と相反して俺はぽかんとしていた。
「い、いいんすか!?」
「おう!」
ああ、やっぱり神様は俺を見捨てなかった。
小さな希望が大きな光となって、俺をモン太先輩に告白するまでを導いてくれている。
一休先輩、覚悟しておいてください。そのうちすぐ、です。
心の中でそう宣戦布告をした。
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確実に黒木に騙されている中坊。先輩づらしたい黒木に萌えます。
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