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強気な彼は厄介(一モン)
「モン太、キスしようか」
一休先輩はいきなりそう言った。
なんだなんだ、と思う。
思わず身構えた俺に一休先輩はくく、と小さく笑った。それが気にいらなくて誰がキスするもんかと顔を背ける。
すると一休先輩は無理やり目を合わせようとしてきた。
「子供か」
「子供っすよ」
はぁ、と一休先輩の溜め息が聞こえる。
(つか、キスって…)
俺たちに「キス」なんて単語は似合わない。
俺たちのものは「キス」なんて呼ぶほど美しくロマンチックなものじゃない。
せいぜい「口と口が触れ合う」ぐらいのものだ。
いつだったか、一休先輩にそんなことを話せば一休先輩は俺は「キス」が出来ると言っていた。
そしてああそうかこの人は俺よりは恋愛慣れしているのかと思ったものだ。
(一休先輩も女の子にはてんで弱いくせに)
「モン太、いいだろ」
「嫌っす」
「なんだ、マジで嫌がってんのか」
(そういう訳ではない)
…勿論、嫌な訳がない。一休先輩もそんなこと分かっている筈だ。
なのにわざわざ確認するのは一休先輩の根性が悪い証拠だ。
「…性悪」
「意地悪、だ」
そういうのも好きだろ、と言われてしまえば顔を伏せて黙るしかない。
「ほんといじめがいがあるな、モン太は」なんて言われても嬉しくない。
俺からしてみたらあんたもいじめがいがある方に分類されますよ。
一休先輩はまだ黙る俺の耳に唇が掠めるぐらいの距離で囁いた。
「モン太、な?」
出た。
「な?」だ。
一休先輩の得意技。俺はこの「な?」に弱い。別に強要されるわけでもない、この「な?」に俺はいつも押し負ける。
…いや、ダメだ。
押し負けてたまるものか。一休先輩のいつもより少し低い声で囁かれる「な?」に俺は頑張って耐える。
「…今日はえらく頑張るな」
一休先輩の感心したような呆れたような声を聞きながらも俺は黙り込む。
「…モン太!」
痺れを切らしたように一休先輩に名前を呼ぶと同時に襟が勢いよく引っ張られ、首が締まる。
「とりゃっ」
「うわ」
そのままの勢いで2人一緒にベッドに突っ込んだ。
ぼふん、と一度跳ねてから布団に深く沈む。
「首締まったじゃないすか!」
「黙るお前が悪い」
2人で布団に倒れ込みながら話す。いつの間にか後ろには壁、前には一休先輩という状態になっていた。
(計画的な犯行だ…)
思わず眉間にしわを寄せて一休先輩を見る。
「…今日の一休先輩はいつもより性悪っすね」
「だから意地悪だっつってんだろ」
後ろから抱え込むように抱きしめられた…と思ったら首を締められた。
なんて先輩だ。
ギブキブ、とベッドを叩いても一休先輩は拘束を解いてくれない。
「好きな子にはなんとやら、っていうだろ?」
そう一言放った一休先輩は後ろでにやにやと笑っているんだろう。
本当に、なんて先輩だ。
「…意地悪は嫌われますよ」
「意地悪じゃない、構ってんだよ」
愛情表現だ、と一休先輩は俺にキスした。
((死ぬ死ぬ))
(は、…一休先輩は、俺を…窒息死させる気っすか!)
(悪い、ついテンション上がって)
(テンションって!)
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普段はへたれな一休しか書いていないのでたまには攻め攻めの一休でも、と思って書きました。
バカップル。
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