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Act.18




『しっしどー!ご飯食べよう!!』

「あぁ」






色写真
Act.18:走って走って走って…






櫻井が転入して来て早くも二週間がたった。
基本的に女嫌いな俺だけど、何故か櫻井は平気だった。

理由は明確。
櫻井は他の女子と違って色目を使ってない…
(と言うかあいつの性格上絶対に使えないな)


そして何より、一緒にいて楽しいと思う自分がいた。
だから俺も友達として普通に櫻井と付き合っていた。






「……相変わらず料理はすげぇよな」

『料理はってどういう意味よ…』

「…………」

『そこ黙るところッスか?!』

「雛五月蝿い」

「すみません千雨様」






そう、普通に…
だから、気付かなかったんだ。






「…?
お前その教科書どうしたんだよ?」

『え!?えっと…
実はお兄ちゃんと喧嘩しちゃって…』

「…………。
一回お前の兄貴みてみたいぜ…」

『良いけど…地獄見ると思うよ?

「(どんな兄貴だよ…)」






あまりにも櫻井が普通だったから。
あまりにも櫻井が楽しそうにしているから。


あいつの周りに起こる異変に…




一部の俺のファンの行動に…――






***






「宍戸君!大変だよ!!」

「あ?何がだよ?」






確かこいつの名前は笹川。
つか、俺もあんなに毛嫌っていた女子達と随分普通に喋れるようになったよな…


多分、櫻井のおかげだな…






「雛ちゃんが、雛ちゃんが!」

「櫻井がどうしたんだよ…?」






嫌な予感がする…
胸騒ぎがする…






「雛ちゃんが宍戸君のファンに連れて行かれたの!!」






頭が真っ白になった。
動悸が速くなっていくのが、分かる。


櫻井が…?
俺のファンに……?






「……っ!何処だ!!」

「……え?」

「櫻井は何処に連れて行かれたんだよ!!」

「……え、屋上…って宍戸君!?」






屋上と聞いた途端俺は周りも気にせず走った。
ただ、ただ櫻井の無事を思って…――






***






「……はぁはぁ…!」






屋上まではかなり距離があり、自然と息も上がったが疲れることすら分からなかった。
自分がよほど同様しているのがよく分かる

そして、俺がドアを開けようとし瞬間…声が聞こえてきた。






「あんた、最近調子乗ってない?
宍戸君が迷惑なのもわかんないわけ?!」






――迷惑なのはお前等だろ…―






「しかも、色目使ってんの分かりやすすぎ!
宍戸君の昼休みまでとって…何様のつもり?」






――何様?
それはお前等のほうだろ―






「しかもスッピン!
あはは!笑っちゃうわよ」






――スッピンの何が悪いんだよ…?

少なくとも化粧が濃お前等より、スッピンのあいつのほうが全然良いぜ―






「本当に宍戸が可哀相だわ…!!
あんた宍戸君の気持ち考えた事あるの?」






――可哀相?俺が…か―






『……っ!うるさい!!』






辺りがの音、全てが消えた気がした…。
黙っていたあいつが、急に怒鳴ったから






『さっきから何なの貴方達は!
良い迷惑?それって宍戸に言われたの?』

「し、宍戸君は優しいから言えないけど分かるわよ!
宍戸君が貴方に迷惑してることぐらい!!」

『ふーん、私からしてはその勘違いの方が迷惑だと思うけど?』

「っな!」

『次そこのあんた!!
色目?私が?はぁ?(某芸人風)』

「な、何よ、実際にそうじゃない!!」

『何で私が宍戸なんかに色目使わないといけないのよ!
私の好みは可愛い子!宍戸は論外!!






櫻井…?






「論外って…
あんた何様のつもりなのよ!!」

『雛様』(ドーン)






はぁあぁ!?
前々から思ってたけどこいつ頭大丈夫か(かなり失礼)






『後、あんた!スッピンの何が悪いのよ!?
私達まだ中学生よ?
せっかくの綺麗な肌今見せないで何時見せる!!
って言うかはっきりいって化粧似合って無いよ!!鬼婆!

「なんですって!!」






鬼婆って!!ヤベえ笑える…!






『そして最後にあんた!
宍戸が可哀相?何言ってんのよ。
宍戸は全然可哀相じゃないよ!
だって私と会えたんだもん!!






……何だその理由。(苦笑)






「あんた、さっきから調子乗りやがって…!
いい加減にしろよブス!!」






――バシンッ!!―






『ギャッ!』






って、今櫻井打たれたのか!?
何ぼんやり眺めてるんだよ俺は!!






「雛!!」






ドアを開け目に入ったのは、俺が入って来た瞬間に顔を青ざめていく女子が4人と…


頬を押さえて座り込んでいる…雛。






「雛!大丈夫か!?」

『…っ……し、宍戸?』






その時、俺の中の何かが切れた気がした。
いつも元気で涙を見せない雛が…


泣いていた。
それも大粒の涙を流して…






「あの、宍戸く「出ていけ」え…?」

「出てけってんだろ!!」

「っ…!」






女どもは“酷い”と言いながら屋上を出ていった。

酷いのはどっちだよ…
こんなに雛を泣かしやがって…!






「雛!大丈夫…か?」

『宍戸…
コンタクト、づれた…』






…………はぁ?






「コンタクトづれたって…」

『さっき殴られた時づれたみたいで……あ、取れた!
痛かったー!!痛くて涙出ちゃったよ、あはは!』






あはは…ってはぁ!?
こいつが泣いていた理由ってもしかして…






『宍戸。目薬持ってない?』






コンタクトづれたからかよ!!






「くっ…!」

『な、何?!』

「いきなり泣き出すからどうしたと思ったら、コンタクトがづれたとか…
くく…本当に面白いな櫻井は!」

『雛』

「は?」

『さっき雛って呼んでくれたじゃん!!』

「いや、それは言葉のあやってやつで…」

『なーんーでー!
ね!今度から雛って呼んでよ!!
私は宍戸って呼ぶから!!』

「俺は呼び捨てでお前は苗字なのか」

『あはは!流石宍戸、ナイスツッコミ!!』

「……はぁー…
雛と話すと疲れるぜ」

『えへへへ!あ、宍戸!』

「んぁ?」






騒動も終わり、俺は屋上のドアの部に手をかけた瞬間俺を呼び止める雛。
振り返ると、満面の笑みを浮かべていた。






『ありがとうね…宍戸』






一歩、一歩…ゆっくりと俺に近付いてくる。
それと反対に速まっていく、俺の心臓の音…


俺の所まで辿り着いた雛は、再びニッと笑いかけた。






『名コンビ、悪友の誕生だね!!』

「うるせぇよ…」






雛にデコピンをして、俺は再びゆっくりと歩き出す。
しかしその歩きも、次第に早歩きに変わり…気がつけば俺は前進全力で走っていた。

後ろで雛が『痛っ!……って待ってよーー!!』とか何とか叫んでいたけど…






「………っ!」






足を止めることはなかった。
とにかく俺は、自分でも分かる顔に帯びた熱を下げる事に必死だった。






Act.18:走って走って走って…END

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