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短編
記憶
知らない、わからない、何も、誰もわからない、

アレルヤは泣きそうになりながらそう言って自分の顔を両手で覆った。

これは本当に現実なのか、こんな、こんな現実、アレルヤが、記憶喪失、だなんて、
「…ふざけてんじゃ、ねえよ、おい、」
髪を引っ張って顔を上げさせる、銀色の瞳は怯えて涙を滲ませていた。
「俺の名前を言ってみろ、」
「わから、ない、」
「言ってみろ、」
「…ごめん、本当に、」
「ッアレルヤッ!!」
「ッ、」
一気に頭に血が上り、力任せにアレルヤをベッドに押し倒す。
「うっ…、」
「いい加減殴るぞテメェ…、」

「──ハレルヤ、やめろ、」

部屋に入ってきたのはロックオン。静かに、低く放たれたその声に、俺は握りしめた拳をゆっくりと解く。
「…ハレルヤ、落ち着け、」
「俺は落ち着いてる、ずっと、」
どうかしてるのはアレルヤの方だ。

立ち上がりアレルヤに背を向けて帰ろうとドアに手をかけた時、ロックオンはまた俺に声を低くくして言葉を向けた。
「一時的なもの、らしい、」
「…だから?」
「アレルヤは何も、誰のこともわからなくなっているんだ、お前がそんなんでどうするんだ、お前が、」
「うるせえよ黙れバーカ、」
「ハレルヤ、」
「……そこに居るのはアレルヤじゃねえ」
そう呟いて部屋を出た。
そうだ、あんなのアレルヤじゃねえ、アレルヤは俺を見てあんな怯えた瞳を向けたりはしない、俺のことがわからないなんて、
「…馬鹿じゃねえの、」
何で事故ってんだよ、事故くらいで記憶飛ばしてんじゃねえよ、お前は何処まで俺に心配をかければ気が済むんだ、馬鹿野郎。
「…本当に、馬鹿だよ、」
急に泣きたくなって、唇を噛み締める。
いつ記憶が戻るんだ、もしかしたら戻らないかもしれない。

俺は、どうしたらいいんだ、
こんな時に苛ついて怒って、怯えさせて、一番馬鹿なのは俺なんだろう。

早く思い出せよアレルヤ、俺を。






おわり



2009 2 14












記憶何処に忘れてきた?

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あきゅろす。
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