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短編
幸せなんかじゃなかった
死ねば逢えると思っているのか。
死ねば哀しむ人間が居ると言うことを解っているのか。
お前は。

「一緒に病院行くぞ、アレルヤ、」
もう見ていられなかった。

ハレルヤは床に座り込むアレルヤの、血で濡れた左手首を掴んだ。
その右手には剃刀。
アレルヤは虚ろに俯いたまま小さく声を出す。
「…病院て、なに、僕が、頭がおかしいって、言いたいの、」
「…お前は病気なんだ、心の、」
「違う…」
「アレルヤ、」
「違う!」
否定の声を上げてアレルヤはハレルヤの手を強く振り払った。
血の滴が床に飛び散る。
もう、何度目か。


アレルヤはこの数ヶ月前から手首を切って死のうとするようになった。
原因は恋人だった男の死、不幸な事故だった。

アレルヤに恋人が居ることは解っていたが、それでもハレルヤはアレルヤが好きだった、兄弟でも、好きだった。
だから哀しんでいるアレルヤを慰めてずっと傍に居てやったのに。
アレルヤの閉じられた心は開かなかった。

「アレルヤ、」
「…っ」
泣き出しそうになっているアレルヤから剃刀を取り、その後優しく抱き締める。
「俺が…居る、」
「…彼じゃなきゃ、嫌だ、」
「死ぬなんて、許さねえ、」
「僕は…死にたい…」
アレルヤはそう言って、涙を溢した。




それから半年。
アレルヤは病にかって死んだ。
あまりに急なことで未だ実感が沸かなかった。
だってこの前まで生きていたのに。

「病院抜け出すなんてことすんなよ、アレルヤ」
「…」
入院すれば助かると聞いたからすぐにアレルヤを入院させた。
アレルヤは嫌だと言ったが死なせるわけにはいかない。
助かるんだから。

そう、安心していた矢先のことだった。
「…最後まで、俺のこと見てくれなかったなあ、お前は、」
思い出して苦笑いをする。
「そっちでは、笑ってるのか、」
恋人には逢えたのか、
「俺は、今でもお前が好きだ、」
この先もずっと。
ハレルヤはアレルヤの墓標に白い花束を添えて、静かに涙した。







おわり

2009 9 27











永遠の片想い。



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あきゅろす。
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