短編
刻(♀アレ/+ミハエル)
金と銀の目をした女がクラスに居た。
そのオッドアイのせいで女はクラス中に気味悪がられ、誰にも相手にされていなかった。
確かにオッドアイは不気味だっが顔もスタイルも悪くなかった、気まぐれで話しかけると女は少し嬉しそうに笑った。
これだけ馬鹿な女は居ないだろう、薄っぺらい甘い言葉をべらべらと並べるとそれを本気にして頬を染める。
単純で馬鹿な女、
それだけ扱い易い。
女は俺に嫌われまいと何一つ反抗もしない。
ベッドの中であいしてるとさえ囁けば何だってするこの馬鹿女の名前はアレルヤと言った。
学校を卒業してもアレルヤとは会っていた。
金と身体だけが目的だが。
「はあ?」
面倒なことをアレルヤは言い出す。
妊娠した、と。
その顔は不安一色だった。
「…ねえ、僕、どうしたら、」
「……」
餓鬼なんか要らない。
もう潮時だ。
アレルヤを捨てよう、そうしよう。
が本音をそのまま言えば泣いて縋り付いてくるかもしれない、それも面倒だ。
「産めよ、二人で育てよう、アレルヤ、」
大嘘。
嘘は昔から得意だった。
アレルヤは驚いた表情を浮かべ、嬉し涙を流した。
やっぱり馬鹿だよお前、
その翌日に俺は街を出、二度と戻ることのない家にアレルヤを残し高らかに笑った。
「おい、」
街中で声を掛けられる。
振り向けば十代前半くらいの餓鬼が居た。
金色の目付きの悪い、前髪で顔の半分を隠し不気味な餓鬼。
「てめえ、ミハエル・トリニティだな、」
「だったら何だよ、」
「…やっと見付けた、」
「あ?」
「アレルヤ・ハプティズムって女、覚えてるか、」
「アレルヤ・ハプティズム?知らねえなあ、つーかお前何なんだ、何の用だ、」
「思い出させてやるよ、」
風が吹いた。
餓鬼の靡いた髪、隠された左目は銀色に光っている。
金と銀の、オッドアイ、
「…あ、」
弾けたように蘇った記憶。
それと同時に腹に突き刺されたナイフ、
まるで人事のように流れる温かい血を見下ろし、また餓鬼に目線を戻した。
「…その、目…、アレルヤ・ハプティズム…、」
10年以上も前のことだ、すっかり忘れていた。
目の前の餓鬼は記憶のアレルヤとそっくりだった。
「アレルヤは俺の母親だ、」
「…は、」
「14年前、てめえが孕ませた腹の餓鬼、…それが俺だ、」
「…」
視界がぼんやりと霞んでいく。餓鬼の声もよく聞こえない。
「初めまして、糞親父、」
「…っ、く、」
「あばよ」
もう立ってられなくなりアスファルトに倒れ込む。
悲鳴が聞こえたような気がした。
アレルヤか、懐かしいな。
おわり
2009 8 23
なんかテーマ変わっとる。
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