短編
離(♀アレ/+ティエリア)
「誰の子だ?」
信じられない言葉が返ってきた。
彼は冗談なんか言う人じゃなかったからこれは本気で言ってるんだと気付いた時ぞっとした。
「誰の、て…そんなの、」
「まさか俺だなんて言うつもりか、」
冷たい、なにもかもが冷たい。
彼はうんざりしたように小さくため息を吐く。
涙が滲んできた。
「…だって、ティエリア、僕…君しか、」
「避妊はしていた、」
「でもっ、」
避妊具は100%安全なわけじゃない。
それは彼もわかっている、彼が言いたいのは、
「俺以外の男の子供なんじゃないのか、」
「…、」
酷い、
堪え切れずに零れた涙にさえも気付かない彼はまだ僕の顔を見ていない。
好き、だった、かもしれない、
よくわからないけど嫌いじゃなかった。
彼は成績も優秀で綺麗な顔をしていて人気もあった、そんな彼が僕に話しかけてくれたことがすごく嬉しくて、
付き合っていると思っていたのは僕だけだったようだ、僕は男の人は彼しか知らないのに、そんな、酷い、
「…ひどい、」
「何か勘違いしているらしいから言うが、俺は君の恋人だった覚えはない。
それに妊娠したと告げたところで君はどうしたいんだ、まだ学生、産んだって育てていけないだろ、中絶しかない。いちいち報告に来なくても少し考えればわかることじゃないか、」
目眩が、する。
彼の言っていることは正しかった。
確かに彼からは好きだとかあいしてるだとか甘い言葉は言われたことがない、でも恋人だと思ってた、恋人がする行為を何度もしていたんだから、僕達は恋人なんだと、思って、た。
もう言葉すら出てこない。
「アレルヤ、君のことは所有物の一つとして好きだった、けれどそんな君はもう要らない」
涙で彼がどんな表情なのかもわからない。
彼は僕を残して静かに部屋を後にした。
おわり
2009 8 20
ミハエル、ライルに続いてティエリアまでもが最低野郎に。
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