短編
愛の矢で人を恋に落としたい(♀アレ/+ミハエル)
ソレスタルビーイングとしてプトレマイオスに来てから一ヶ月が経つ。
ここの連中はどいつもこいつも仲良しこよしで驚いた。
俺にまでそんな態度で接してくるから困ったもんだ。
俺は馴れ合う気は最初から無いってのに。
ああミッションが無い日は退屈だ、
そんなことを思いトレミーをぶらぶらしていると、アレルヤ・ハプティズムと遭遇した。
改造人間双子の妹。
俺の顔を見るなり顔を歪めて踵を返す。
馴れ合う気は無いのだがそんなにも露骨に態度で示されると腹がたつ。
「おい、」
細い手首を掴むと睨んでくる銀色。
目つき悪いよなあこいつ、
「…何か用?」
「何か用じゃねえよお前、態度に問題有りだな、」
「…それ君が言えることじゃないだろ、」
「何だと、」
何だこの女、
イラッとした瞬間に手を振り払われ、アレルヤ・ハプティズムは早足で歩いて行った。
「あの改造女…」
今すぐにでも殴ってやりたいがここは抑えといて、。
この俺にガン飛ばしたことは必ず後悔させてやる。
大体の奴らが寝静まってる時にでも部屋に押しかけて、なんて考えていた。
静かな通路には俺の足跡しか響いていない。このままアレルヤ・ハプティズムの部屋に行ってやる、
「…ん?」
声が聞こえる。
そりゃあ誰かが会話しててもおかしくないが、どうやら男と女。
壁に身を潜めこっそりと頭を出して様子を伺った、
「…、」
あれ?
俺の頭は一時停止状態になった。
だってだって、
ハレルヤ・ハプティズムとアレルヤ・ハプティズムが、通路で、キスをしていた。
え、まじで?
何でこんな所で、
てかお前ら双子だろ、
え、え、ええーっ、
ぞわわ、背筋が寒くなり俺はその場から逃げるように退散した。
「キモーっ!」
アレルヤ・ハプティズムを痛い目にあわせてやるということはすっかりと頭から消え去り、
それからと言うもの双子を見る目が変わった。
前からベタベタに仲が良すぎるとは思っていたがまさか出来ているなんて気色悪過ぎる、おえ、思い出しただけでも吐きそう。
ハレルヤ・ハプティズムとは口を開けば喧嘩になってしまうが、あんな狂暴な奴がベッタベタに可愛がるアレルヤ・ハプティズム、キスしてたってことは、もう、やってるよな、多分、げろっ。
こんな奴らと一緒に行動するなんて無理だ。
なるべく双子とは会わないようにしていたのだが、地上のミッションでハプティズム妹とペアになってしまった。
ハプティズム兄の方がやたらとうるさかった、殴りかかってきそうな勢いだった、あのシスコンめ。
どうせならネーナと一緒が良かった。
「一日目はこの街の偵察…つってもこんな寂れた街で何すんだよ」
小さな街だ、活気のない街。
ここに軍が密に組織を作っているという噂があるらしい。
「めんどくせえなあ、おい改造女、俺部屋に帰るからお前一人で偵察してろ、」
「…」
「シカトすんなって、」
「触るな、」
肩に置いた手をパシッと払いのけられ、忘れていたあの日の怒りが蘇ってきた。
「てめ、調子乗ってんじゃねえぞ、」
「それは君だろ、」
「んだとこの改造女!!」
「やめてくれないかこんな街中で、」
「るせえ!こっち来い!」
ずるずると引きずるように路地へ連れて行き、殴ってやろうか犯してやろうか怒りで煮えた頭で色々考えた結果、とりあえずぶん殴ることにした。
「てめえみたいな生意気な女には躾が必要だわな、」
「…」
壁にアレルヤ・ハプティズムを押し付けて拳を握り締め、目つきの悪いその澄ました顔目掛けて振り下ろした。
「っ!?」
一瞬だった。
アレルヤ・ハプティズムが消え、拳は壁へと減り込んだ。
避けられた、そう理解したと同時に走る拳への痛み。
あれ、俺ダサくね?
「ミハエル・トリニティ、」
「!!…んがっ…!」
背後から声に振り向くとアレルヤ・ハプティズムの拳が頬に飛んできた。
早ええっ、見えなかった…っ
「君が言う通り僕は改造された人間だからね、力は強いんだよ。
それに今の動きで解った。君、弱いよ、」
冷たいアスファルトに体を打ち付けながらも、戯れ事をぬかすアレルヤ・ハプティズムを歯を食いしばって見上げる。
返り討ちにしてや──る、
「…っ、」
アレルヤ・ハプティズムは。
逆光で姿は暗かったが、やけに銀色の目が綺麗に光って見えた。
その姿に何も言えなくなり、動けなくなり。
「帰りたいなら帰ってもいいよ、僕一人でも十分だ、」
そう言って背を向けていくアレルヤ・ハプティズムを俺はしばらく呆然と見つめていた。
あれ、おかしい、
なんだこれ、え、
嘘だろ、
まさか、まさかの、
「…惚れた、」
うわあ、
自分で自分が信じられねえええ。
おわり
2009 8 1
たまには強い♀アレルヤを。
強い男は強い女に惚れる!
ハレアレちゅう目撃のくだり別に要らなかったな(∵)
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