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短編
未来 前編(♀アレ)
麗らかな昼下がり、黒髪の少年が街をふらついていて警察に補導された。
少年はソレスタルビーイング学園とぽつりと呟き、警察は学園に連絡。
ちょうど手のあいていたロックオンが警察まで少年を迎えに行った。
指導室へと入り少年と向かい合わせになって席に着く。

「お前何年だ?」
「…」

無愛想。
目すら合わせない。

「名前は?」
「…」
「おいおい、頼むから何か言ってくれよ、」
「…ハプティズム、」
「ん?」

やっと出た言葉。
だが聞き取れずに聞き返すと、少年は顔を上げた。

「ハプティズムを此処に連れて来てほしい、」
「ハプティズム…て、」

ハプティズムはロックオンの生徒だ。
だがこの少年と何の関係が?

「その前にお前の名前、」
「俺はガンダムだ、」
「…いや名前、」
「俺がガンダムだ!」

何だかこの少年は危ない気がする。
頭が。
このままだと暴れだしそうなのでロックオンはため息を吐きながら渋々従うことにした。

「ハプティズム、二人居るがどっちを連れてくればいい?」
「両方だ!」
「っああ、わかったわかった、」

ちょうど授業も終わる頃だ。
ロックオンは指導室に少年を残し、二人のハプティズムを教室まで呼びに行った。
数分後、指導室へと連れて来られた双子のハプティズムを見た瞬間、少年の目が見開かれる。

「ったく何だよめんどくせえな、」
「ディランディ先生、話って一体、」
「ああ、それが、」

少年はガタ、と席を立ちツカツカと双子の兄、ハレルヤへと歩み寄り、

「あ?なんだこのガキ、」
「…ハレルヤ・ハプティズム…ッ!!」
「ぶっ」

少年は突然にハレルヤへと拳を振り上げた。
その瞳は怒りに満ちている。

「ハレルヤ!」
「っなにしやがんだテメェ!!」
「貴様が…!貴様が!」

殴り掛かろうとするハレルヤをアレルヤが、そして少年をロックオンが慌てて宥め落ち着かせる。
少年はギリギリと燃えるような瞳でハレルヤを睨み続けていた。

「ロックオン!このガキは何なんだよ!」
「いや俺にもさっぱり…」
「ねえ、君の名前は?」

アレルヤが優しく問うと少年は大人しくなり俯きながら小さく口を開いた。

「…刹那、」
「せつな、」
「今から言うことは全て事実だ、驚かないで聞いてほしい、」
「え?」

ハレルヤには獣のような目を向けていたがアレルヤに向ける瞳は穏やかな少年に、ハレルヤは舌打ちをする。

「俺は刹那。今から約17年後の未来からやって来た、」
「えっ!?」
「はっ!?」
「あっ!?」

衝撃の一言。
一瞬の沈黙、だがそれを破ったのは笑い出したハレルヤだった。

「ばっかじゃねーかクソチビ!何が目的か知らねーがなあ、漫画の読みすぎじゃねえのかあ?未来から来たなんてよお…笑っちまうぜばーか!」
「…ハレルヤ・ハプティズム…そしてアレルヤ・ハプティズム、俺はお前等を止めに来た、」
「あ?」

今度こそ、少年・刹那の言葉に三人が言葉を失った。

「俺の両親はハプティズム兄妹、お前等だ…!」

シ…ン、
静まり返る室内。
数分、いや数秒だったかもしれない沈黙の後にやっと口を開いたのはロックオン。

「…笑えない冗談だ、てかリアル過ぎ。お前のそんな話を信じろって方が無理だ」
「お前は黙っていろ」
「っんな…」
「俺はこの双子に用があるんだ」

ギロリと睨み付けてくる瞳に映る、双子。
ハレルヤは歯を食いしばりながら刹那を睨み返した。

「…ふざけたこと吐かしてんじゃねえよクソが、」
「…ねえ君、本当は僕達に何の用なんだい…?」
「…」

誰も信じようとはしない。当然と言えば当然か。
刹那は一度俯き、また顔を上げた。

「俺は今から約17年後に生まれた。父はハレルヤ・ハプティズム、母はアレルヤ・ハプティズム。
近親相姦の果てに生まれた俺を誰も祝福はしなかった。
父も母も周りから責め立てられ駆け落ち、俺は養子に出された。
俺が未来から来た理由はお前等兄妹を止めること…、」
「…」
「証拠がほしいのならDNA鑑定でも何でもやってやる」

話が重い。

「と、とりあえず今日はこの辺で終わりにしよう、もう授業が始まるし」
「お前は黙っていろと言っただろう!」
「うっ」
「…ハレルヤ、僕気分が悪い…」
「アレルヤッ、」
「お前等何処へ行く気だ!」
「帰るんだよ、おいロックオン、俺達早退すっからな」
「あ!待て!」
「さいなら」

残されたロックオンと少年。
刹那はロックオンを睨むと二人に続いて指導室を後にした。
思わず大きく深いため息が漏れる。

「頭痛くなってきた…」






数日後。
刹那は双子の家にまでついて行き、あまりにもしつこいので渋々行ったDNA鑑定。
の、結果、
刹那が本当にハレルヤとアレルヤの子供であることが解った。
一緒に居たロックオンは青ざめるしか出来ないまま二人と少年を見つめている。

「…まじか、」
「君が…刹那が、僕達の、子供…?」
「やっとわかったか、」

信じざるを得ない。
有り得ないが有り得てしまっている。

そこでロックオンは疑問に思っていたことを静かに口にした。

「…刹那、お前は二人を止めると言ったが、そうしたらこの世界でのお前は生まれないことになるんだぞ、」
「…別に、いい、」

低い声で小さく呟いたその表情は曇っている。

どうして、アレルヤがそう問い掛けようとしたのと同時に刹那は続けた。

「両親の居ない俺はずっと孤独だった。養母は俺への愛情なんてとうに消えていたし機嫌が悪い時は俺を異端児だと罵った。本当の両親のことを知ったときはショックだったがそれでも会いたくなった。だが駆け落ちしたと聞いて行方はわからないままだ。
俺はもうこんな思いはしたくない…だから過去に来た。
俺の存在が無くなればお前等だって辛い思いをすることもないだろう、だから、」
「…刹那、でも、そんな、」
「いいんだ、」

胸が締め付けられるような話だ、アレルヤは哀しそうな表情を浮かべ、刹那を見ていた。
未来の自分達のせいでこんなにも辛い思いをしているなんて、。
ハレルヤは何かを考えているようにただ黙っている。

「…俺は何としてでもお前等をくっつけない。ずっと監視するからな。特にハレルヤ・ハプティズム、お前を。」
「…うっざ」



しかし。



「…なっ…ま、まさか…!!」

青い顔でよろよろとよろめく刹那。
逆に顔を赤くするアレルヤ。
そして刹那と同じく青い顔のロックオン。
目を丸くするハレルヤ。

数日後にわかったことだが、アレルヤは既に妊娠していたのだ。
予期せぬ事態、と言うか予定より早過ぎる事態に刹那は頭を抱える。

「まさか!妊娠するのはまだ先のはずだ!何故…俺が来てしまったことで歴史が変わってしまったのか!?くっ…!」
「クソチビ、」

苦悩する刹那の肩を、それまで黙っていたハレルヤが掴む。

「ハレルヤ・ハプティズム…貴様、近親相姦の恐ろしさをわかっていないのか…!世間から非難の声を、」
「そんなもんはどうでもいいんだよ、」
「な、」

ハレルヤは曇りなどない、吹っ切れたような表情をしていた。

「テメェが来てからずっと考えてた。未来の俺はどうやらどうしようもねえ馬鹿野郎らしいな、自分で呆れたぜ、」
「、」
「出来ちまったもんは仕方ねえ、テメェがそんな思いをしねえように俺はアレルヤとテメェを護ってみせる、」
「なっ」
「ハレルヤ…」
「…本気で言っているのか、許されなどしないんだぞ…」
「別に許しなんていらねえよ、」
「……、」

この世界に来て初めて両親を見た刹那。
そしてこの瞬間初めて刹那はハレルヤが父に見え、感動さえした。

「僕もびっくりしたけど…大丈夫、刹那、ちゃんと産んであげるから…」
「…アレルヤ、」

アレルヤの聖母のような微笑みで刹那は涙まで滲む。

「…おい、」

今まで空気化していたロックオンがやっと口を開くことに成功したが、その表情は困惑していた。

「ハレルヤ、アレルヤ、お前達は双子の兄妹だ、それが…理解なんて到底出来ないぞ、許されなくてもいいと言っていたがそんな簡単なものじゃ…」
「だからテメェの協力が必要だ、」
「は?!」
「教師は生徒を護るもんだろ、なあ先生?」
「おまっ、いつも呼び捨てのくせにこんな時だけ…!ことの重大さがわかってるのか!?」
「でも決めたんだ、」
「…」

いつになく真剣な表情だった、
アレルヤも。
ロックオンは小さくため息を吐く。

「…考えさせてくれ、」
「…」

未来から来た少年は、過去を変えることが出来るのか、。







つづく

2009 7 16

















懲りずに続きもの。
でも上手く書けなかった…

・親子なのに刹那とハプティズムの目の色が違うのは血が濃過ぎたため。
・タイムマシンはエクシア。
・ロックオンはハプティズムの関係を怪しんでいた。

と、まあ無駄な設定。

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あきゅろす。
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