ネット上の恋
突然パソコンの画面に渦巻きが現れ、今まで打ち込んだ文字は跡形も無く消えていた。
「ええっ?! どういうことぉ???」
「ク〜〜クックックッ」
ガラリと窓が開いて、黄色いカエルが部屋に飛び込んできた。
黄色い体に、先程パソコン画面に表示されたものと同じ渦巻きがあるカエル。
「カエルさん?私のパソコンをハッキングしたのは貴方?」
部屋に降り立ったカエルは、チラリとパソコンを横目で見て慧の手に触れた。
「あぁ、やっと見つけたぜぇ。」
言うなり、慧の手の甲に口付けた。口付けられた手が痺れるように感じて、慧はクルルの手を振り払った。
「俺はクルル。お前が『電脳の姫』だろ?」
「それ私のこと?そう呼ばれているの?」
「クックックッ〜、源内 慧。一人暮らし、趣味はインターネット。現在、人との交流はほとんど皆無。」
「……人に言われると、何だか自分がダメ人間みたいだけど、…その通りです。」
「慧、お前、俺に見つけて欲しくて此処に居るかぁ?」
(///△//)
クククッ〜と笑うクルルに、初対面の筈なのに赤面してしまう。
何故かクルルの言うことを肯定してしまいたくなった。
私は貴方を待っていたのだと。
「人は誰かと出会い触れ合うことで、生きてるって言えるんだぜぇ。
誰にも会いたくないなら、俺が傍に居てやる。俺の傍で生きれば良い。」
クルルは、慧が生きる理由をくれようとしていた。
一人でいることは死んでることと同意義語で、生き物は他社の存在があって初めて自己を認識できるのだから。
「俺の傍にいな。」
隊長や先輩、小隊の奴らが俺に刻み付けた奇跡。生きてるってことを身を持って体験させられた。お前にも見せてやる。
「生きてるってことを、実感させてやるゼ〜」
白雪姫のように眠っていた私を目覚めさせた王子さまは、目の覚めるような黄色のカエル。
「物語が変わってしまってけど、」
電脳の姫は、初めて笑顔を見せた。
「ありがとう、私の王子さま。」
これからよろしくね、と慧はクルルの頬にキスを落とした。
彼女の唇のような赤に、クルルの頬が染まった。
クルルは、柄にも無く照れた自身に驚いた。
「めでたしめでたし、なんて終わり方できると思うなよ〜」
ク〜クックックックックッ
黄色いカエルの王子さまが笑う隣で、電脳の姫と呼ばれた慧はいつでも笑っていた。
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