ネット上の雪




いつものようにクルルがパソコンの前に座っていると、電脳の姫の噂が流れていた。

何となく探し始めた電脳の姫は、噂ばかりが先行していた。

誰かに雇われたわけでも、何か目的があるわけでもない電脳の姫の動きは、クルルに疑問を抱かせた。

クラッカーやアタッカーなどのように、データの不正利用や破壊を目的にしているわけではないようだった。



そこにまた、興味をそそられた。






噂だけが先行しているように、なかなか遭遇できなかった。

興味半分で探し出したのもあり、クルルはすぐに飽きてしまった。

「今日だけでやめるかぁ?」

そろそろケロロから言われている次の作戦の発明をしなければならない。

この辺が潮時か、とネットサーフィンをやめようとした。



画面の端に、雪が降り始めた。

すぐにその雪は見えなくなり、クルルの指が高速でキーボードを打ち出した。





クルルの疑問通り、本当に電脳の姫は、何もしていなかった。

ただ、ネット上に存在するだけ。

フラフラとも言える動きは、森を彷徨う行く当ての無いお姫さまそのもの。



クルルはそのまま見つめていた。

彼女が何をするのか、どこに行くのか。



そして、電脳の姫の現実について調べ始めた。









慧は一人で部屋に住んでいた。

両親は自分達のやりたいことやっている為、現在は一緒に住んでいなかった。

慧はそれでいいと思っていた。

家族といっても、他人は他人。

自分達のやりたいように生きている両親を、慧は恨んだりしていなかった。

慧がやりたいようにさせてくれる両親に感謝しているぐらいだった。



けれど、慧自身はやりたいことがみつからなかった。

ただ、ネット上に存在している時だけ、何か自分らしく生きているような気がしていた。

現実世界の私を知らない誰かが、私自身を探してくれたら……



誰にも飲まされていない毒が、体を巡っているように。

ただ、ここで何かを待っている。

自分から世界を変えることは何もせずに。



ネット上の私を誰かが壊してくれたり、いっそ両親がネットが出来る環境を否定すれば……

なんて、

………他人任せな生き方では、何も変わらない。

物語のお姫さまのように、世界はある日突然変わったりしない。



けれど私は、いつの間にか自分から世界を変える術を見失ってしまった――――――











「っっ!!!」




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