いつか読んだ話
月が昇る。
私の部屋に月光が差し込む季節になった。
いつか読んだ本に、裸になって、月光に体の部品を少しずつ晒していく描写があった。
挿絵もなく、ただ文字だけでの表現だったが、私にはとても神秘的で美しい情景が眼に浮かんでいた。
月光を浴びたことで、その女性は美しくなった。美しくなったと描写は無かったが、私は確実にそうなったと信じている。
「だから、月明かりが差し込む夜を楽しみにしているの。」
二人だけの部屋、月光の中で並んで体育座りをして夜空を見上げていた。
「なんだ?今から慧がストリップショーでも見せてくれるって言うのかぁ?」
くくくっ〜と、楽しそうにクルルが笑った。
「違うよ、ご希望ならいつかやってあげるけど。」
割ととんでもない発言を聞かされて、クルルはずり落ちたメガネをあげた。
いつか見せてくれると慧自身が言った以上、必ずやっていただこうとクルルは心に誓った。
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