ついていけない
夏美は、目の前の展開について行っていなかった。
トラブル&アクシデントが信条で、人の嫌がることを好んでやるクルルが、慧を褒めている。
普通ならクルルが何かを企んでいると疑って当然だが、慧は頬を染めてクルルと見つめ合っている。クルルの言葉に何の疑いも持ってない。
というか、さっきツッコもうと思っていた、慧がアピールしたいスキな人って、
クルルぅ〜?!!!
今気づいた事実に、夏美は目を白黒させた。
「どうかしたのか?騒がしいようだが」
ギロロが庭からリビングに入ってくる。夏美しか見ていない彼は、反対側のソファーに座っているクルルと慧に気づいていなかった。
夏美が指差す先には、頬を染めて笑う慧と、彼女の膝に座るクルルがいた。
ギロロは自分がおかしくなったのかと、夏美を振り返った。
「二人の世界に入っちゃったみたい。っていうか、知らなかったな〜、慧がクルルを好きだってこと」
「俺は、クルルが慧のことを好きなことは知っていたぞ」
「えっ ?! ギロロが?」
恋愛事に関して鈍そうだと思っていたギロロから、驚愕の事実を聞いた夏美は、また目を白黒させた。
「俺が気づくのはおかしいか?しかし、慧が日向家に遊びに来ると、普段ラボから出てこないクルルが、必ずリビングに顔を出すだろう?」
ギロロの言う通りだった。慧が1週間に2、3回遊びに来るようになってから、クルルがリビングにいる時間は圧倒的に増えた。
「クルルにも、割と分かりやすい時があるのね」
「……夏美」
「何、ギロロ?」
「ここから出ないか?」
言いながらギロロは、すでに夏美の手を引いていた。でも、と躊躇う夏美に足を止めずに理由を話す。
「アイツのあんな所を見続けて、無事でいられるわけがない。たとえ、今日何事もなくても、明日から何をされるかわかったもんじゃないからな」
夏美よりもクルルとの付き合いの長いギロロが言うのだ。素直に従った方が良いと判断し、夏美とギロロはリビングから退散した。
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