かくて互いに繋がれて
*鳩様リク:カムイ(魔王)×アルギュロス(勇者)の監禁系裏
ふわり、と、魔に属する紫紺色の粒子を散らして大理石の床に降り立つ。
四方を硝子張りの壁に囲まれたその一室は、まるで箱のように出入りする為の扉がない。
硝子の向こうには、血のように紅い月が夜よりも暗い闇の中に圧倒的存在感を持って浮かんでいる。
その薄赤い光が差す部屋の中央には、大きなベッド。
大柄の大人が三人大の字で寝そべってもまだ余裕のある幅。
求めていた姿は、皺が刻まれたそのシーツの上にあった。
それは、青年であった。
紅い月光の色に染まらず、貴金属たる銀そのものの色を持って輝く、うねりながら伸びた長い髪。
それが浮き彫りにする肌は白く、剥き出しの手首や足首には黒い鎖。
眠りについているのか瞼は閉ざされていて、一目で女性を思わせる整った顔の輪郭に触れた。
薄く開いた唇に目を惹かれ、顔を寄せる。
己の唇と重なる瞬間、目が見開かれ、
「ふふ、残念でしたね」
「・・・くっ」
殺気に反応して右手を上げれば、パシンと打つ拳。
一拍遅れて鎖が波打ち、じゃら、と音を立てる。
魔力を纏い、力を相殺した彼の拳を、受け止めたままの手のひらでやんわりと包む。
悔しげに歪む彼の表情が燻っていた情欲に火をつけ、口端を吊り上げながら今度こそその唇を奪った。
彼は勇者だ。
この身を滅ぼし、人間に平和をもたらすとされる救世主。
神などという妄信を盾に、その神託と称して同族であるはずの人間ですら食い荒らす愚か者共がこちらの土地と支配権欲しさに放った、刺客。
それが仲間などというくだらない雑魚を引き連れて魔族の領地を訪れた時は、操り人形がむざむざ命を落としにきたかと嘲笑ったものだ。
が。
「っ、っ、―――ッ」
欲を高められて屹立した己のモノを突き刺す度に、押し殺した声が零れ落ちる。
射殺さんばかりに睨んでいた金と淡蒼の珍しい色合いは与え続けた愉悦に熱を孕み、色を揺らがせる眦に溜まった涙がこの行為に感じ入っている事を伝える。
「気持ち良いですか?」
羞恥心を煽る為に、吹き込むように耳元で囁く。
「誰、が、ぅあっ」
言葉を発するタイミングを狙って、中のしこりを叩いた。
歯を食いしばって声を押さえていた彼は自らの反論のせいで抵抗を放棄し、結果、口が閉ざせなくなる。
「ぁ、ぁっ、はっ、あっ」
ようやく聞けた彼の喘ぎにほくそ笑む。
突かれるままに上がる艶めいた声音はさらにこちらの興奮を高めた。
「気持ち良いのでしょう?こんなに、零して・・・」
「そんな、こ、ああっ」
右手を彼のモノに這わせる。
勝手にイかないようにと戒めた先端からは先走りだけがだらだらと溢れていて、亀頭を爪でなぞればビクリ、と全身ごと跳ねた。
同時に、きゅっと中が締まる。
熱く熟れた肉壁に絞られるようなその感覚に快感を覚えつつ、抉る動きをゆっくりなものに切り換えた。
「素直に気持ち良いと言えば、今以上の快楽を差し上げてもよろしいのですよ?」
「ぃ、ぁ・・・っ、や、だっ・・・」
緩やかな動きに焦らされて、それでも虚勢を張って拒絶する。
中々強情な様子に屈服させたい感情が湧きながらも、同時に苛立ちも覚えた。
こんなにも快楽の沼に沈めているというのに、なぜ抗って浮かび上がるのか。
彼の四肢は鎖で捕らえた。
硝子故に脆く見えて、しかし決して彼の手では壊す事の出来ない密室に閉じ込めた。
魔王たる自身が魔力を練って創り上げたこの空間には、人間や彼の仲間はおろか、力ある魔族ですら立ち入る事は許されない。
―――誰の助けもこない、自ら逃げる事も叶わない。
この魔王の手から逃げる、それを考えるだけ無駄。
それがわからない程、愚かではないはずなのだ、勇者と呼ばれたこの男は。
なのに何故、たった一人しかいない縋るべき相手の甘言を受け入れないのか。
「ひぁんっ!」
腹立たしさそのままに、勢い良く突き上げる。
仰け反った背中、シーツを掻く爪先。
笑みを消して、目を見開いた彼を見下ろす。
「俺は、甘やかしてしまったのですかねぇ」
一方的な交わり、だが彼も快楽を見出していたから、そのまま甘く蕩けさせればこちらを受け入れるのではないかと期待した。
だが彼はいつまで経っても堕ちる気配がない。
多少は揺らいでいるかもしれないが、完全に身を委ねる時を待つほど、こちらも我慢強くはないのだ。
がらりと変わった雰囲気を感じとったのか、快楽に耐えるだけの表情に恐怖と驚愕が混じる。
だがそれもほんの一瞬の事。
今まで手加減していた腰の動きを、思う存分叩きつけた。
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