吹雪 隙間風が、か細く高い音をたてている。 カタカタと絶え間なく揺れているのは小さな窓、その外に広がる風景は、止まない吹雪に包まれていた。 コウキとジュンが旅人の為に建てられたこの小屋に立ち寄ったのは、ほんの数十分前。 山の天気は崩れやすいというが、シンオウに聳える山の付近も例外ではないらしい。 足を踏み入れた時のからりとよく晴れた天気は、瞬く間に豪雪と化してしまった。 そんな中でこの小屋に無事避難出来たのは、運が良いとしか言いようがない。 パチ、と薪が弾ける。 木肌を包み、灰になるまで燃やし続ける炎は温かいが、小屋全体を包み込む冷気が一枚上手のようだ。 「寒いな」 熱が逃げないよう膝を抱え、呟いたジュンがぶるりと身体を震わせる。 「うん、寒いね〜…」 新たに薪を一つ足しながらコウキも頷いた。 こう見えても互いにそれなりに着込み、また寒さには強い方なのだが、それを上回る寒さがひしひしとくる。 炎タイプのポケモンを抱き締めればかなりの温かさを確保できるだろうが、コウキの手持ちには炎タイプはいない。 ジュンにはゴウカザルがいるが、小屋は小さいので、出しただけで狭くなってしまう。 「…そういえば人肌って温かいらしいよな」 どこかで聞きかじった知識をぽつりと口にすれば、普段の彼からは想像がつかない早さでコウキが視線を向けてきた。 じっと見つめられ、え、何だよ、とジュンもしどろもどろになる。 「何かまずい事言ったか?」 「…人肌って、それ…僕と抱き合いたいって事?」 「…は?」 コウキの言う意味がわからずジュンはきょとんとする。 その服の中に、手を滑り込ませるコウキ。 「うひゃっ、冷たっ!!」 「ジュンが言ってるのってそういう意味だけど…」 「待て待て、コウキ!」 触れた腹から徐々に上に上がってくるコウキの手を、服の上から鷲掴んだ。 「オレ、そういう意味で言ってない!」 「ぼくにはそういう意味に聞こえたよ〜」 にっこりと笑みを浮かべ、コウキがジュンの肩を押す。 仰向けに倒され、ジュンは焦った。 「落ち着けコウキ!こんな寒い中でしたらオレ、凍え死ぬ!」 「大丈夫だよ〜、寒さなんて感じさせないように一生懸命頑張るから〜」 どう抵抗してもマイペースを貫くコウキに、ジュンは冷や汗をかくばかりだった。 その後、抵抗が実を結んだかどうかは、ますます白に染め上げる吹雪のみが知る。 |