GO! V クレスとシングが涙目のカイウスと共に気絶しているモンスターを二対捕獲し、それらを棺の中に入れて蓋を閉じると、カチャ、と鍵を開けるような音が鳴った。 「お、開いた」 扉を押すと、先程までの拒みようが嘘のようにすんなりと開いていく。 差し込む明るい光に、カイウスが喜色を浮かべた。 「もしかして、外か!?」 「みたいだが・・・」 ユーリはカイルを抱え直してから扉を抜ける。 向こうは外・・・ではあったが、 「まるで迷路みたいだ」 クレスの言葉通り、そこはかなりの高さがある緑の壁が何処までも聳え立つ場所だった。 救いは室内から外路に出た事か。 しかし、日の暮れが近いのか、空が橙色がかっている。 「進むぞ。ここで立ち止まっててもしょうがないしな」 日が完全に沈み、夜を迎えれば危険度が増す可能性もある。 壁伝いに進み、途中で分かれ道があれば落ちている石を拾い、それで壁を削って目印をつけた。 こうしておけばどの道を通ったのか把握できるし、万が一一周して同じ場所に戻ってもすぐにわかる。 幸いループする事もなく行き止まりに当たり、引き返しては違う道を進んで迷路も半ば程進んだかと思われた頃だった。 「・・・何か聞こえないか?」 そう尋ねてきたのが、カイウスだった。 全員揃って立ち止まり、耳を澄ます。 が、聞こえてくるのは未だに眠り続けるスタン、カイルの小さな寝言だけだ。 「いや、何も・・・」 言いかけたユーリはハッとして前方を見た。 遠く離れた先にある突き当たり。 その方向からほんの僅かにだが、声らしき音が聞こえたのだ。 しかも近づいているのか、徐々に大きくなっていく。 と、ほんの一秒程度だが、遠くで数人右から左へ走っていった。 その次に回転しながら後を追う巨大な鉄球。 大きさから見てどう考えても数メートルは超えている。 「・・・何だありゃ」 「もしかして、トラップじゃ・・・」 「待って、今走っていったのってルークとエミルとリッドじゃなかった!?」 「・・・助けよう」 ヴェイグの一言に頷いたユーリ達は、鉄球が過ぎていった辺りへ向かう。 遠くから見ると突き当たりにしか見えないが、ある程度近づくと左右、もしくはどちらか一方へ道が伸びているのはこの緑の迷宮に入った時点で学習済みだ。 鉄球が流れていったのはユーリ達から見て右から左。 左方面を見れば壁に挟まったのか、止まったままの鉄球が見える。 その向こう側から声。 「くそっ、行き止まりかよ!」 「も、もしかして僕達、閉じ込められた・・・?」 「・・・この鉄球、硬いしなぁ・・・。運良く通りがかってくれるやつがいたら」 鉄球に巻き込まれて押し潰されるという悲劇は回避出来たらしいが、逃げこんだ先はどうやら道のない行き止まりらしい。 鉄球に近付き、ユーリは剣の柄でコンコンと黒光りする表面を叩いた。 「おーい、無事かー?」 「お、その声はユーリか?」 返答を返してきたのはリッドの声だ。 「お前ら、いい所に!この鉄球をどかしてくれ!出られないんだ!」 「ど、どうかお願いします」 「わかったよ!ちょっと待ってて、今どかすから!」 「の前に、一旦スタンとカイルを安全な場所に置いてきてからな」 先程曲がったばかりの道にスタンとカイルを寝かせ、向こう側のルーク、リッド、エミルと協力してどうにか鉄球を動かす。 動いた瞬間には今度は逆走する鉄球にユーリ達の方が追われる羽目になったが、曲がり角に逃げ込む事で回避する。 「あー、終わったかと思ったぜ」 塞いでいた鉄球がなくなり、晴れ晴れしい笑顔を浮かべたルークが肩を回す。 「本当だよな。餓死はごめんだ」 腹を押さえたリッドにエミルが苦笑を浮かべた。 「帰ったらご飯にしよっか」 「それにしても、ここはあんなトラップまであるんだね」 クレスが鉄球が過ぎ去った方角を見て呟いた。 「アレには参ったぜ。まさか転がってくるとか」 「・・・あれ?また音が・・・しない?」 シングの一言にルークとリッドとエミルがハッと顔を上げる。 「また近づいてきてるぜ」 カイウスが若干顔をしかめつつ言う。 「よし、さっさと抜けるぞ」 ヴェイグがスタンをおぶり、自身もカイルをおぶってからユーリは促した。 ルーク達の二の舞になるのはいただけない。 |