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NO.4000


*六道桜様リク:携帯獣長編「青春謳歌!」の番外でNトウ+ヒビカナ



「トウヤ」


名前を呼ばれた時から嫌な予感はしていたのだ。

無駄にかっこいい…というより綺麗な笑顔を浮かべたNがにじり寄ってくる。

その表情に嫌な予感を覚え、後退るが、気がつけば背後にはフェンス。

カシャン、という金属音にしまった、と思う間もなく顔のすぐ横に手をつかれた。

片手だけだったので空いている左側に身体をずらそうとしたが、密着してくるNの長身に邪魔をされる。

…逃げられない。


「…な、何。N」


黙っていれば勝手にあれこれとやってくれる人なので、一応尋ねる。

Nは右手に乗った小瓶をトウヤの前にかざした。


「これを飲んでほしい」

「ヤダ。絶対飲まねぇ」


小瓶はガラスで出来ていて、無色の液体が揺れている。

その液量は小瓶の半分程。

つい先程までは封すら切られていなかったそれのもう半分が、どこに消えたのか。

ちらり、と視線を横に向ける。

フェンスとNに挟まれたトウヤから少し離れた距離。

そこで、


「なぁ、ヒビキ。オレの事…好きか?」

「もちろん好きだよ。カナデは?」

「オレも、好き。大好きで、好きすぎて苦しい…」

「ホント!?」

「本当…だ。だから…キス、して」

「!!もちろんだよ、カナデ!」


人目を憚らずイチャつくヒビキとカナデの姿。

しかもあのカナデがデレ全開だという、目を疑うような恐るべき光景だ。

トウヤは知っている。

この液体をヒビキが無理矢理飲ませた事によって、普段ツンデレ丸出しのカナデが人懐っこい猫よろしく素直にキスまでもせがんでいる事を。

従って、これを飲んでしまえば彼の二の舞…。



そんな無様な姿をさらせるか。



キッと睨むように見上げれば、Nは眉尻を下げた。


「どうしても、飲んでくれないのかい?」

「当たり前だ。そんなもの、飲む気はない」

「…そう」


すっと小瓶が離れていく。



諦めてくれたか。



小さく安堵の息をついたトウヤだったが、安心するのはまだ早かった事に気づく。

Nはフェンスから浮かせた片手で小瓶の蓋を開けた。

縁に口をつけ、中身をあおる。

と次の瞬間、一気に顔を近づけて、トウヤの唇を塞いだ。


「んっ!?」


小瓶を素早くポケットに入れたNは、目を見開くトウヤの抵抗を封ずるように両手首を掴んだ。

それらをフェンスに押しつけられて、カシャンと大きな音が鳴る。

Nが唇を割って舌を忍ばせてきた。

とろりとした液体が流れ込んできて、トウヤは焦る。


「んー!んんーっ!!」


やめろ、と叫ぶも唇がくっついたままでは言葉にならず、呻き声がもれるだけだ。

Nが口内を縦横無尽に暴れまわる。

時折奥近くをかするせいで反射的に喉が動き、液体を嚥下してしまった。

飲み込んだ事を確認してからようやくNが顔を離す。

けほ、とむせたが、未だ手首は掴まれたままで、喉元に手をやる事が出来なかった。


「…けほっ、げほ…N…、何、飲ませた」

「素直になる薬」



素直?

欲情の間違いじゃないのか?



カナデがついに「ヒビキが欲しい」と抱きついたのを見てしまい、咄嗟に目をそらした。

視界に入るNの満面の笑顔が憎たらしい。

間もなくじわじわと身体が熱くなっていく。

助けを求めようにも、ここには四人以外の部員も人もいないし、求めたところでどうにかなるものなのか。


「さあトウヤ、素直になって」


Nの声が脳裏に木霊する。

トウヤは目をギュッと瞑った。



くそ、どうにでもなれ!!





―――



六道桜様、リクエストありがとうございました!





あきゅろす。
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