砂浜で追いかけっこ
*アルギュロス+ユーリ
雲一つなく透き通るような晴れた青空。
エメラルドグリーンに色づく美しい海から波が押し寄せる、涼しげな音。
太陽の光に焼かれた白い砂浜を踏みしめながら追いかけっこに興じるカップル達ーーー
「リア充爆発しろ」
ーーーを見て不穏な言葉をもらしたのは、立てたパラソルの下で膝を抱えたアルギュロスだった。
波間にいちゃつく人々を恨めしげに睨みつける彼に、隣でシャーベットをかじっていたユーリがどうどう、と宥める。
「これでも食べて落ち着けよ」
手渡したのはカップに入ったアイスクリーム。
バニラ味のそれを受け取り、開けながらもアルギュロスは叫ぶ。
「ユーリさんはそう思わないの!?せっかくの長期休暇なのに、よりにもよってフレンさんの部隊に遠征が入ったんだよ?しかも休暇と同じ期間!」
「まあそれがあいつらの仕事だから仕方ねえだろ」
「仕方なくないよ!せっかくアスベルときゃっきゃうふふいやんあはんと休暇を楽しむつもりだったのに!」
「早く食べないと溶けちまうぞ」
恨みつらみを吐き出すアルギュロスとは対象的に、ユーリはあっさりしたものだ。
単に遠征で長期不在になるフレンに慣れているともいうべきだが。
急かされて、アルギュロスはようやくアイスクリームに手をつける。
暑さで溶けかけたバニラ味を咀嚼する間は、アルギュロスも口を閉ざさるを得なかった。
ユーリも会話を振らないので、しばしの時間二人の間に沈黙が流れる。
「・・・そうだ。何でこれを思いつかなかったんだろ」
あっという間にアイスクリームを完食したアルギュロスが、不意に立ち上がる。
「騎士団が壊滅したら、アスベルが遠征に行く事もなくなってずーっといちゃつけるよね」
沈黙の間にその考えに至ったらしい。
「というわけだから、今から騎士団本部を襲撃してくる」
「顔は見られないようにしろよー」
止めるでもなく、ユーリは残り少ないシャーベットをかきこむ。
アスベル不在で暴走しがちなアルギュロスを監視するよう頼まれて、こうして愚痴及び付き添いを行っていたユーリだったが、若干面倒に思っている。
騎士団襲撃は面白そうだけどな、と一瞬思ったが、以前所属していた事もあるのでさすがに顔は割れているだろうと、銀色の髪が揺れる背中を見送るだけにとどまった。
ーーー
その数日後、ガルバンゾ国には、銀髪の謎の青年に奇襲をかけられた騎士団本部が壊滅寸前まで追い込まれたというニュース飛び交った。
そして翌日、騎士団本部への襲撃の知らせを受けてフレン隊の遠征は中止となり、急遽引き返してきたアスベルとフレンに怒られるアルギュロスの姿がバンエルティア号で見られたという。
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