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竜界ハロウィンのあれ


開かれた棺の中。
決して寝心地が良いわけではない筈の狭苦しいそこに、ころりと横になっている友人の姿。
ご丁寧に組んだ指を腹の上に乗せ、あどけない寝顔を易々とさらけ出している様は、まるで永遠の眠りについた死者のようだ。
呼吸する度に微かに上下する胸、耳を澄ませば聞こえる優しい寝息が正真正銘彼が生きている事を示しているが、思わず呼吸を確かめる為に口元に手をやり(手袋に覆われていたのでわからなかった)、脈を測って(やはり手袋に覆われて以下略)しまった。
そもそも目に入れても痛くない程可愛がっている妹が兄が好いている相手、それも天界の王を殺して運んでくる筈がない。
実際そうしたら今度は竜界と天界が大戦争である。
いや、竜界VS天界&魔界、か。
呼んだ、と聞いて逢瀬を楽しみにしていたヒスイだが、まさか棺の中で眠っているとは予想もしていなかった。
しかもこの棺、ヒスイの物ではなく魔界の王の物である。
自身が身に付けている衣服も同様だ。
一体妹君はこんな物をどこからくすねてきたのだろうか。
まあ細かい事を気にしてはしょうがないが。
ふむ、ヒスイは考える。
もう一人の友人たる魔界の王は、闇夜に血を啜るあの超有名な怪物然とした様相だ。
ならば彼に「仮装」した自分もそれに則るべきか。
ヒスイはすやすや眠る天界の王のうなじを晒すように固定した。
チラリと見た寝顔は己に降りかかる災難にまったく気付いていない。
ヒスイはそっと肌に唇を寄せる。
柔らかく温かな皮膚を食い破り、きっと甘いだろう血を啜る為の牙はない。
それでも、この肌に痕を残す手段はある。
ちゅ、と小さなリップ音を立てて赤い印を残した一瞬、寝息が途絶えたが、それに気付く前に満月を遮る影があった。





あきゅろす。
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