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眠いんだから寝かせろよ


一度ついてしまった癖というものがこれまた厄介なモノで、中々正す事が難しい。
特に本人に治そうとする気概がなければ尚更である。
余程切羽詰まった状況ではない限り害があるわけではないので、正す必要性があるかどうか意見が分かれるのも要因の一つだろう。
だがその癖を、よりにもよって、今日のこの日に発動させるのはどうかと思う。
寝心地の良さそうな柔らかなベッドの上。
天蓋付き、真っ白なシーツ、その下にあるキングサイズの身体が沈むような柔らかい弾力。
枕はフワフワのもこもこで、かけられた毛布もまた肌触りが良い。
寝具のどれを取っても超高級品である。
流石王の為に設えた品々。
きっと一つでも売りに出せば一生を遊んで暮らせるかもしれない額になりそうだ。
そんな贅沢品に包まれて安らかな寝息を立てる男。
無造作に散らばった美しい闇夜色の髪。
その毛先が縁取る完璧な造形の顔は警戒心0の無防備だ。
すぐそばに一応は敵でもあった相手が立っているのに王たる者がここまで無防備であっていいのか。
ベッドの縁に腰を下ろす。
まったくこれっぽっちもスプリングの音が聞こえない。
重みで多少は揺れるが、そんな小さな揺れ如きで目が覚めるような男ではなく。

「喰っちまうぞー」

ふに、と小さな唇を指先で押した。
これで起きてくれたら、据え膳のような肢体を無茶苦茶にむしゃぶり尽くしたい凶暴な情欲に蓋をする事が出来るのに。





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