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お約束


ベリアルは走っていた。
メインストリートに溢れたアバターやAIを躱し、時折ぶつかりそうになりながらすれ違い、危ないだろ、と怒声を浴びながらも走るのを止めない。
───咄嗟に走った後で、バイクに乗るべきだったと後悔したのはすぐ。
だが後悔したところで取りに戻るわけにもいかない。
ベリアルはチラリと後ろを振り返る。
振り返って、ひっと喉を引き攣らせ、ますます足を止めるわけにはいかなくなった。
しかし大体何かに駆られてスピードアップすると、縺れたり引っ掛けたりして転ぶのが世のお約束。
あ、と思う間もなく狙ったように転がっていた石に足を引っ掛け、無様に滑り込んでしまった。

「いっ・・・」

地に手をつけ、起き上がろうとする。
が、その前にベリアルの腕を掴み、仰向けに転がし直した者があった。

「捕まえたぞ」

見下ろす目。
ギリ、腕を掴む手に力が込められ、痛い。

「は・・・、離せ、アザゼル」
「何故だ?」

ニヤリ、浮かぶ冷酷さを秘めた笑み。

「貴様は逃げた獲物。俺は貴様を捕獲した。ならば捕らえた者として貴様を好きに扱う権利があるだろう?」





あきゅろす。
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