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そして歯車は回り始める





―――ある場所、惨劇同時刻。





『緊急報告、都内某所にて【Spirit】生態反応確認』



スピーカーから発せられる、焦りを含んだ声。その声に辺りはざわめいた。信じられない、という顔をしている者、冷静に報告に耳を傾けている者・・・恐怖している者。それらの者達に共通していることは、全員が武装をしていること。もちろん、ここは日本という国であって、銃器の所持は法律で認められていない。なのに何故、この者達は武装しているのか。見た目からしても、自衛隊とは言えない。



「場所は何処だ」



一番奥に座っている一人の男が、冷静に言葉発した。騒がしい中で何故か響いたその声に、周りにいた者全てが男の方を向いた。男の、怒気を含んだような声に皆黙った。スピーカーの向こうの声は何かを躊躇うように止まり、一呼吸置いてからまた響き渡った。



『【始まりの場所】です』



騒ぎが大きくなった。その名称が何を意味するのか、その場にいる者達は理解しているらしい。それまで冷静に報告を聞いていた者達も、恐怖の表情へと変わった。頭を抱えていたり、震え上がる者も現れた。男が顔を歪めて深くため息をつき、デスクを思い切り叩いて立ち上がった。室内は一気に静まりかえり、驚いた表情で男を見る。男は皆の顔を見回し、それから口を開いた。


             ・・・・
「・・・9時間後に向かう。だが、消滅する可能性は残っている。油断はするな」



男は部屋の外へ出ていった。それが合図であるかのように、その場にいた者達は室内を駆け回り、何かに対する準備をしていた。9時間という、長い準備時間の理由はわからない。だが、男が言っていた消滅、という言葉。それが関係しているのだろう。これから、何が始まるのだろうか。







部屋から出た男は、長い廊下を歩き自室へと戻った。入り口側にあるショーケースを開き、丁寧に仕舞われていたシンプルなデザインの洋剣を取出し、刃に刻まれている文字を眺めた。その眼差しは、忌ま忌ましいモノを見ているようで、とても冷たい。



「また、【遊戯】が始まるのか・・・」



男の小さな呟きは、その時吹いた風に掻き消され、誰にも聞かれることは無かった。鮮やかだった空の色が、澱んだ灰色に変わっていく。


世界の空気が、変わった






そして歯車は回り始める
動きだしたのは、残酷な運命



あきゅろす。
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