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始まりの悪夢





熱い


熱い



熱さにうなされて顔を上げると、そこに広がるは地獄絵図。周りの部屋から炎が吹き上がりすぐ近くにある教室からも、赤い炎がまるで生き物のように燃え盛る。あちこちから聞こえる悲鳴、崩れ落ちる物の音、それらが頭に響き渡り現実を実感していなかった自分の頭が動き出した。何故、どうしてこうなった。訳のわからない状況に逃げださなければならないのに動けなかった。



熱い



とにかく逃げようと動こうとしない身体を無理矢理動かし、部屋近くの教室に繋がるドアに近づいた。教室内は炎や煙が充満してとても逃げられるような状態ではなかった。外へ行くにはこの教室を抜けなければならない。他に外へ出るとしたら窓だけだがここは不運にも四階。死なないかもしれないが骨折は確実にするだろう。最終手段にしておきたい。それにこの炎の勢いだと逃げる前に死んでしまうかもしれない。そんなことを考えながらまだ教室の中を見ていると、視界の端で何かが動いた。よく見るとあちこちで何かがうごめいている。目を凝らしてよく見てみるとそれは人間


気持ち悪くなり小さく呻いて口許を抑えてうずくまった。なんだアレは、あれが人間だというのか。燃えて皮膚がただれ、人間としての形を失ってなおも動く理由はなんだ。この教室にいるということは、自分の、クラスメイトなのだろうか。そう考えたところで我慢の限界になり喉の奥から込み上げてきた酸っぱいモノを、胃がよじれるんじゃないかと思うぐらいに吐き出し、咳込む。生理的に溢れ出した涙をそのままにして、口許を近くにあったタオルで拭ってふらりと立ち上がった。何故そうしたかわからない。たった今気持ち悪くて吐き出したばかりなのに俺は教室へ繋がるドアへと手を掛けていた。


駄目だ駄目だやめてくれ


頭の中で叫んでも自分の意思に反して手は動いた。カチャリ、と予想していたよりも大きく音が響き中でうごめいていたモノの動きが止まったのが分かった。気づかれた。そうしてやっと手がドアノブから離れて後ずさることが出来た。人間だったモノ達はドアに向かって歩いてくる。俺もこうなるのだろうか人間じゃないただ動くだけのモノに成り下がるのだろうか。嫌だこうなりたくない死にたくない気持ち悪いやめてくれ。


ゆっくりと近づいてくるモノから逃げようと踵を返して奥の部屋へ走った。もう窓から飛び降りよううまくいけば生きていられる助かるんだ。奥の部屋へ通じる扉の前へ着いた瞬間に感じる違和感。周りの部屋は燃えているのにここへ通じる廊下とこの部屋だけは燃えていない。だが戸惑っている暇はない。

ドアノブに手を掛けるとありえないほど冷たかった。勢いよく扉を開くとその部屋に炎はなく異様に空気が冷たかった。後ろを振り返ってみるとモノ達が立ち止まっていた。何故かわからないがとにかく逃げようとして窓を見た。



その瞬間に頭を支配したのは恐怖



窓の外にはまるで精霊の様な蒼く光る女の形をした何かがこの建物を囲むように無数に浮いていて、逃げることが出来ないようにしているみたいだった。あまりに非現実すぎて理解が追いつかない。だが自分は何故かコレが怖い外に出てはいけない気がしてならない。外に出たらコイツらに殺されるそんな考えしか浮かばない。

だが、この部屋に炎が回ってくるのも時間の問題かもしれないと、意を決して窓を開けようとしたが開かない。辺りを見回し近くにあった椅子を持ち上げて窓にぶつけると、窓はけたたましい音を響かせて綺麗に割れた。そしてそこから飛び降りようとしたとき、割れた窓の外に精霊が集まった。驚いて後ろに倒れそのまま反対側の壁まで後ずさろうと足を動かすがうまく下がれない。窓から一体の精霊が入り込み近づいてきた瞬間に恐怖で壊れそうになった。自分はここで終わるのだろうかという考えだけが妙にはっきりしていた。





「嫌だ・・・・死にたく、ない。」





精霊が手を翳すと俺の周りが淡く光り精霊はそれを吸い上げた。それと同時に身体中に走る痛みと寒さに叫び声を上げながら精霊を見た。精霊は俺の周りの光と同じ白に変化し目の前で弾けた。眩しい痛い寒い暖かい気持ちの悪い感覚を感じながら俺の意識は闇の底へと落ちていった。








始まりの悪夢
なんでこうなった?



あきゅろす。
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