短編
8
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気が付くとリビングのソファの上だった。
下にはタオルが敷かれており、額の上には冷たいタオルが置かれていた。
身体を起こそうとしたが全身が鉛のように重い、眩暈がし、軽く吐き気もする。
「まだ無理して起き上がらない方がいい」
「半兵衛、私…」
どうやらのぼせて気を失っていたらしい。
良く見れば半兵衛も赤い顔をして気だるげにソファにもたれ掛かっている。
彼ものぼせたろうに、きっと私を介抱してくれたんだ。
「…ごめん」
「今日は謝ってばかりだね、僕はそろそろお礼の言葉が」
「…私には、半兵衛だけだから。
ありがとう」
今日一連の流れを思い出し、ボヤけた今の頭で精一杯の感謝を口にした。
半兵衛はのぼせた赤い顔を逸らすと、何も言わず私の頭を撫でた。
それが心地よくて私はまた微睡む。
ふと窓の外を見ると、雨は晴れて月の光が薄暗い部屋に差し込んでいた。
再び目を綴じると部屋に彼の声だけが響いた。
「当たり前だ、君は僕だけのものだから」
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