短編
1
※激裏です。裏よりもかなり生々しい性的表現があるので、ご注意下さい※
冷たい雨が地面を濡らす。
行き場を失った私は、誰もいない夜の公園に1人。
かまくらの様な遊具の中で自分を抱きかかえ蹲っていた。
雨足が強くなるにつれ、地面を伝ってくる水が私の爪先の辺りまで侵攻してくる。
「はぁ…」
春先とはいえ、まだ息が白い。
半兵衛と喧嘩した勢いで家を出てきてしまったが、財布を置いてきたのはまずかった。
本来ならファミレスやどこかで時間を潰せたろうに、全く迂闊だった。
今更戻るのもかっこ悪いしな…。
でも半兵衛が悪いんだから。
謝るまで絶対帰らない。
いや、謝っても許してあげない。
って、大人気無かったかな?
“ヴーッヴーッ”
ポケットの中の携帯が鳴る。
無視してやろう、なんて思いながらも、しっかり画面をチェックしてしまう私。
…半兵衛だ。
意地っ張りな私は、それに応答しない。
自分でも悪いところだって分かってる。
でも、だって…。
なんだか自分にも嫌気がさしてきて、鼻の奥がツンと痛んだ。
まだ、泣いて無いし…。
「おい、何してんだ?」
「…慶次?」
声をかけられ、ふと顔を上げると、私のいる遊具の中を覗き込む友人の姿があった。
「よっと」
「わっわっ!ちょっと何!?」
慶次は持ってた傘をたたみながら、狭い遊具の中にその巨体を押し込めてきた。
ギュウギュウになった空間に、ほんのりと人の温かさが漂う。
「何って、こんな時間にこんな所で女1人にさせておくわけにはいかないだろ」
「別に、家近いし」
「じゃあ何で家にいない?半兵衛の奴と喧嘩でもしたか?」
「…アンタに関係無いし」
やれやれと苦笑いした慶次だったけど、それ以上内容を追求する事はしなかった。
…有難いけど。
「ま、とにかく寒いだろ!うち来るか?」
「は?」
いや、私には半兵衛が…って、どうでも良いよね。
そこで、まるで見透かしていたかの様に、また半兵衛から着信が入った。
今度のコールは随分長い。
「ん?半兵衛か?どれ、貸してみ」
「あちょま!」
焦って変な声が出てしまった。
私の静止を振り切り、慶次は私から携帯を奪い勝手に出てしまう。
「あ?半兵衛か?名無預かったから、じゃ」
ええ!?突然なんて事を!
そして遠くからでも分かるほどの半兵衛の怒鳴り声が電話から漏れてくる。
何言ってるか分からないけど、すごい、半兵衛のこんな怒鳴り声初めて聞いたかも。
「あ?お前泣かしたんだろ。いや、違うし!今?近所の公園だけど来んなよ!絶対来んなよ!」
慶次は最後にフリにしか聞こえない言葉を言って電話を切った。
何それ?
押すなよ?絶対に押すなよ!って言って絶対押すやつじゃん!
「勝手な真似はしないでくれるかな」
丸い入り口の向こうにスラリとした脚だけが見え、聞き慣れた声が聞こえた。
って早っ!!!!
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