短編
9
眩暈を起こしそうな激しい光の中、政宗は立ち竦んでいた。
光の中に入ったは良いが…これで移動している状態なのか?
とりあえず、変化があるまで下手に動かない方が良いな。
しばらくそのまま目を瞑っていると、ふと光が弱まるのを感じたのでその場所から一歩踏み出した。
完全に光が収まると、政宗の目の前には見慣れた光景が広がっていた。
「ここは…」
「え?政宗?」
名無のリビングだった。
と言うか、光に入りただ通り抜けただけの様だ。
とりあえず名無は側へ駆け寄るが、状況を全く理解できずオロオロする政宗を見つめ、さっきあんなにシリアスな別れ方したのに…と名無は涙を流した。
決してその涙は安堵したとか嬉し涙とかでは無い。
ただただ恥ずかしかった。
同時にちょっと苛つく。
何この紛らわしい光!
赤っ恥かいたわ!!!
政宗が来た時と同じ光が現れたとはいえ、これで帰れるなんて保証は無かったのだから仕方ない。
「…えーと。名無さん、これからも宜しくお願いします」
政宗は気まずそうに何故か敬語でそう言うと、名無に向かい頭を下げた。
「……これでいいのか…」
名無は何とも言えない複雑な気持ちを声に出して誰に言うでもなく突っ込んだ。
「…良くない、早く退いてくれ…」
「「!!!???」」
政宗と名無は驚き声のした方…床へ目を向けると、
そこには名無に踏み付けられる人影があった―――――
―了―
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