短編
1
名無が、この時代へ来て1年が経つ。
僕が拾った当時は右も左も分からなくて、何をするにも危なっかしくて僕の側を離れられなかった。
それが今はどうだろう。
彼女は城内を好き放題うろついて、自由気ままに過ごしている。
城の者達や秀吉は、物怖じせず気さくに話しかけてくる名無を気に入ったようで、特に咎める事も無く好きにさせている。(本人が事の重要さを理解していないだけにも思えるが)
先日なんて、「秀吉様に寝起きドッキリをする!」と言って、朝一番に秀吉の部屋を襲撃していた。
『寝起きどっきり』の意味が分からず放置したのが間違いだった。
名無は眠っていた秀吉の口に、南蛮から仕入れた檸檬と言う果物の果汁を、秀吉の口の中いっぱいに絞った。
「ッッッ!!!ヴォオエアア?!???!!!」
声にならない叫び声を聞きつけて、僕が秀吉の自室に駆け込むと、そこには顔を真っ赤にしてのたうち回る秀吉と大爆笑する名無の姿。
もちろん名無はこっ酷く叱られた。
そして何故か僕まで…。
名無め…
「半兵衛様の許可取ったから良いと思って!」と秀吉に苦し紛れの言い訳をして…!
間に受けた秀吉は僕に「飼い猫の面倒はちゃんと見ておけ!」と怒鳴る始末。
その檸檬という果実は、とても酸っぱいという。
さて、悪戯っ子の名無にお仕置きをしなくちゃね。
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