短編
7
―――朝
「ふあぁー…良かった、快晴だ」
カーテンを開けると白い陽射しが部屋中に降り注いだ。
身支度を整えてリビングへの扉を開け、恐らくとっくに起きている筈の政宗の元へ向かった。
「おはよう、あ、やっぱり起きてた」
「good morning!当たり前だろ!?俺は何時でも出られるぜ、ほら早くしろ!」
まるで散歩をせがむ飼い犬の様に目を輝かせながら吠える政宗を尻目に、名無は簡単におにぎりを作るとランチボックスへ詰めた。
「そんな急かさなくても外は逃げないよ」
「いいから早く行くぞ!」
名無の手を取り外へ飛び出す政宗。
突然繋がれた手に名無は戸惑い、少し照れたが冷静に戻った。
「政宗、道知らないよね?」
「…道案内頼む」
何の考えも無しに飛び出した政宗に一瞬でもときめいた自分が馬鹿みたいだ、と自分を叱咤し近所の河原にある公園へと足を運ぶ。
その間、お互いの手は繋がれたままだった。
しばらく歩くと、ベンチと花垣しかない質素だが綺麗な川沿いの公園へと辿り着いた。
「やっぱ外の空気はいいな!俺のいた所より少々変な臭いがするが…」
「それ現代の空気の臭いだからね、私じゃないからね」
雑談をしながらベンチに座り、出来立てのおにぎりを2人で頬張る。
陽射しが暖かく、それに反射した川の水が輝いていて風は穏やかに吹き、名無と政宗の髪を軽くゆらす。
「最高の天気だな…」
「そうだね…」
「名無のおにぎり、やっぱり美味いな」
「ん……」
暫く沈黙があり、政宗の方から口を開いた。
「俺は、きっといつか帰らなきゃならねえ。
勿論まだ帰る方法は分からねえし、いつまた突然飛ぶか分かんねえ」
「うん…」
「だが俺は…此処に居たいと思っちまってる」
「……うん」
二人共どんな顔をすればいいか分からず俯いたまま会話が進む。
何かを覚悟したかのように政宗が顔を上げ
、真剣な眼差しで名無を見つめた。
「名無、俺は…っ!もし帰る事になっても、せめてその前だけでもお前と―――――うおたっ!!?」
「うわ!!!?」
そこへ突然の爆音がし、政宗は奇妙な叫び声を上げ言葉の続きを発せなかった。
名無と政宗は音のした方を見る。
―――名無のマンションだ。
雷の様な光に貫かれ続けている名無のマンションだが、他の人には見えていないのか通行人や誰も関心をよせようとしなかった。
「この光、政宗が来た時と同じだ…」
「……」
「早く行こう!もしかしたら戻れるかも知れない!」
「……ああ」
名無に手を引かれ駆け出す。
マンションへ近付くと先程の光はまだそこを貫き続けていたが、最初に見た光よりも若干弱くなっているようだ。
「消えちゃうかも知れない…政宗早く!もう戻れなくなるかも知れないんだよ!?」
玄関前で躊躇する政宗に声を掛けるが、なかなか室内へ入ろうとしない。
そうこうしている内にも光は少しずつ弱くなっていく。
「名無は…俺に居なくなって欲しいのか?」
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