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短編
1

「ただいまー…」


仕事を終え自宅へと戻ると、誰もいない部屋に挨拶をする。

中へ入り、玄関ドアにはチェーンを掛けた。
女性の一人暮らしは何があるか分からない。
この扉には覗き窓が無い為、相手の顔は扉を開けて確認するしかないから、毎回この作業をしなくてはならない。
…まぁ、安い家賃だから文句は言えないな、と名無は思う。


さて、と靴を脱ぎ玄関マットに足を乗せた時だった。



すりガラスのついたドアを隔ててあるリビングの方から凄まじい光が漏れた。
バリバリと今までTVアニメ等でしか聴いた事が無い電撃音が聞こえる。


「ひっ!?や、やば!!」


もしかして漏電!?
何かコンセントに異常が!?

そんな事が瞬時に脳裏を横切ったが、まずは逃げるのが先だと玄関に慌てて戻った。

しかし、人間危機に直面すると平常心を保てないようで何時もの動作がままならない。
震える指先でチェーンを外そうとするが、どうにも上手くいかない。

そうこうしてる間にリビングからの光が消えた。

少しだけホッとし、玄関脇に備え付けられている消火器を手に踵を返した。


そうだ、一応借家なんだから何とかしないと!
あのバリバリも消えたし、火がついてるようなら消さないと家が全焼してしまう!


ある程度の覚悟を決め、名無は消火器を構えつつリビングへの扉を開ける。



「…………」


部屋を見渡す限り、どこも燃えてもいないし焦げてもいない。
ただ何よりも目に付いたのは、部屋のど真ん中で突っ伏す人間(と思われる)の姿だった。
大の字で倒れており、背中からは煙がもくもくと上がっている。

まったく状況を理解出来ないが、煙を見るにさっきの雷の様な現象は、この人が……発したか食らったか分からないが、とりあえず元凶だろう。


不審者っ?け、警察……!


光を見た時よりも血の気が引く感覚を覚え、消火器を向けたまま音を発てないように後ずさる。

が、それよりも先にその人は起き上がってしまった。

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