短編
7
―――――。
「こんな事をして、これからどうするんですか」
蒸した座敷牢の中に、着物を軽く羽織っただけの2人が寄り添うように寝転がっている。
薬による昂りは消えたものの、名無は側にいる光秀の香りに動悸が止まなかった。
「“どうする”?大丈夫ですよ。そうですねえ……」
光秀は名無の顎を捉え、自身の方に振り向かせると口付けを落とした。
「名無を連れて、貴女の祖国へでも参りますか」
その微笑みは深く、何かを企んでいるようだったが、名無からは僅かな蝋燭の光の影になって、細かい表情までは読み取れなかった。
「ええ…?……私の国は、良いところですが城主が頼りなくて……」
「構いませんよ。私は名を変えて身を隠し、助力に尽くしますからね。それに―――――」
名無は瞼に唇を落とされ、髪を撫でる光秀の手が心地よくて微睡んだ。
意識を手放すか手放さないかのところで、光秀は小さな声で囁いた。
「信長公は、もうすぐ姿を消しますよ……」
名無の耳にその声は届かなく、幸せな夢の中へと沈んでいった……。
ー了ー
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