bet 俺が嗤うとメイの皺は深くなる。これ以上言うことはないと、全てを否定するように背を向け扉を開きかけたメイに言葉をかける 「今日は男の子?」 「…お前に関係ねーだろ」 少しの間とそっけない答え。それだけ言って止めた動きを再開したメイ 「アキラ」 「んだよ」 少し開いた扉を閉めて振り返ったメイを見つめて言葉を紡ぐ 「少し話があるんだ。奥行く?」 「ここで良いだろ」 「そ?」 めんどくさそうなメイにおどけてみせるとさらに皺は深くなり瞳がとっとと話せと先を促す 決意を瞳に、のせた。もう迷わない。決めたんだ。これ以上このままにはしておけない。声が震えないように、瞳が揺るがないように、内心がバレないように、冷たい声と冷たい瞳で覆い隠して 「別れる」 静まり返った室内で誰かが息を飲む音が聞こえた 「俺、アキラと別れるから。部屋にあるものは全部持って来たつもりだけど、残ってたら悪いけど処分しといてくれる?」 「今更なんだよ?いきなり訳わかんねー」 「確かに今更だよ。アキラの浮気はずっと前からだし俺はそれを黙認してた」 俺はメイの浮気に気づいた時も、ドタキャンされた時も、それを問い詰めたり責めたりしなかった。だからって俺が傷ついてないとでも思ってんの? 「じゃあ」 「もう決めたんだ」 言葉を遮ると、メイは荒々しく扉を殴りつけた。鋭い瞳で睨むメイから俺も視線を外さない 「別れて、それで?俺の前から消えんのか?逃げんのかよ?」 「なんで俺がお前程度から逃げなきゃいけない訳?」 なあ、バレてないとでも思ってんの?無理して去勢張ってるだけで内心動揺してんのわかってんだぜ?手も声も震えてるしな 「俺は絶対別れ」 「勘違いすんなよ。俺は別れるって言ったんだ。別れてでも別れようでもない。お前がなんと言おうと関係ねーんだよ」 黙ったまま縋るような瞳を向けるメイ。ため息をつくとメイの肩がびくりと震えた 「俺な、賭けてたんだ。お前がすんなり別れたら嘘だって言ってなんで別れんだよって殴って馬鹿みたいにキスしようって。……でも、引き止められたら別れるって、決めたんだ」 我ながらひねくれ過ぎだろ、なんて場違いな苦笑が漏れる 「なんでだよ、なんで…なあ、冗談だろ?冗談って言えよ」 「これからは総長と副総長だ。立場は弁えてもらう。ああ、総長室にはもう許可なく入るなよ、鍵は付け替えるから処分しといてくれ」 これ以上話すことはないと冷たく言い切った From 葵喬 ‥‥‥ 賭けたのは譲れないもの [*前へ][次へ#] |