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12
翌日の午前中に、太一達は帰って来た。帰ってすぐ、ヒカリに3発ほど殴られた。
「いってー……」
「大丈夫っすか……?」
「あー大輔。んーまぁ大丈夫だ」
大輔は声量を落とした。
「あぁ、太一さん、言いました。アレ」
「あぁ……隠せなかったか?」
「言い当てられちまって」
「あーそれじゃしょーがねぇな。デジタルワールドの事は?」
「そっちは喋ってません。そこは何とか誤魔化しました」
「そっか。まぁ、いつまでも隠しておけるもんでもなかったしな。
それに、どうやら随分有名みてぇだしな、俺達」
「え゛っ、マジっすか」
「おう。知る人ぞ知るって感じで有名らしいぜ」
「……へー」
大部屋の反対側では骸と綱吉が話していた。太一達の話は聞こえていない。
「あぁ、そうそう、ほっつき歩いているときに小耳に挟んだのですが」
「何? 骸」
「ジェッソは領土を広げる事と平行して、異世界にも興味津々らしいんですよ」
「そうなの?」
「えぇ。他人の会話をちらりと聞いただけなので本当かどうかはわかりませんが……。
けれど、白蘭が“選ばれし子供達”を知っていた事がこれで説明できます。調べているでしょうから」
「なるほど!」
「八神さん達の異世界が知りたいのか、異世界なら何でもいいのか……それによって対処が変わるかも知れませんね」
「うん。八神さん達にも伝えてこなきゃ」
数人ずつで集まり、好き好きに談笑する一同。部屋の空気がゆったりとしたものになったその時、
別室にいた光子郎と獄寺が部屋に戻って来た。その表情はあまり明るいものではない。
「お、光子郎」
「どーだった? 獄寺ー」
「……やはり、全くの新薬と見て良さそうです」
「そっか……」
「そうだ名前……ねぇロンシャン、そっちで何て呼ばれてる?」
「え? あぁ……、“ヘヴンズゲート”って呼んでるのは聞いた事あるよ」
「うわっ」
思わず岳が顔をしかめる。周りの選ばれし子供達も同様の反応を示した。
「? 岳君?」
「あー、いやぁ、ツナー、何でもねぇよ? あっはははー」
「めっちゃくちゃ挙動不審なんだけど大輔」
「気〜のせーだって」
獄寺が腕を組み、背もたれに凭れかかる。その表情は険しい。
「“ヘヴンズゲート”……天国の扉、か……」
「嫌な名前付けたものですね……。幻覚で天国が見えるからなんでしょうが……」
「そのまま続けたら、本当に天国が扉開けて待ってるぞ、ってな」
山本が嗤う。
「地獄じゃねぇの?」
「大輔の言う通りかもね」
賢も苦笑を零す。
「あ、ねぇ、今更なんだけどさぁ、」
「はい、ミミさん」
「警察に言ったら何とかなるんじゃないの? 駄目かな?」
かわいらしく首を傾げるミミ。
ところが、「警察」の言葉が出た途端綱吉達東区出身の者の表情が一斉に嘲るそれになった。
「警察なんて、とってもじゃねーが機能してねぇよ」
「でなきゃこんなにアンダーが乱立するはず無いでしょう?」
「あ……そっかぁ……」
了平が腕を組み、過去を振り返るように話し出した。
「俺は初めて東区に来たとき驚いたな。南は当たり前のように警察が普通の仕事をしていたからな」「あぁ、じゃあ俺逆ー。行ったのは西だけど、警察が仕事しててびびった」
「そんなに違うんだ……」
「ぶっちゃけアンダーの方がまともなくらいだよ、東は。ホントに腐敗がひどい」
綱吉が切なそうに首を振る。

話題が切れたことを見て取り、骸が声を発した。
「八神さん、」
「何だ?」
「周りの皆さんも。先ほど綱吉君には話したのですが、白蘭は異世界に興味があるそうなんです」
「異世界……」
「選ばれし子供達の皆さんは異世界を調査するチームでしたよね?」
「あぁ、そうだ」
「恐らく、白蘭は何らかの手段で八神さん達選ばれし子供の事を知ったんでしょう。
皆さんの事は機密のはずですから、普通に調べたのでは行き着かない」
「じゃあ何でお前は知ってんだよ」
「僕は都市政府と繋がりがありますから。そんな事より、選ばれし子供の皆さんが白蘭に狙われる恐れがあります」
「え……僕たちが、ですか?」
伊織が不安げな表情を浮かべる。その手を賢がそっと握った。
「ええ。実際に異世界へ行っているわけですから、これ以上の材料はない」
「ま、そー言われっとそーだな」
「その際狙われやすいのはやはり対抗手段を持つ太刀川さん以外の女性陣……特にヒカリさん、あなたです」
「……そうでしょうね」
「そんなに、巫女持ちって狙われやすいの?」
ボンゴレにはいないから……と続ける綱吉に、ヒカリが苦笑で答える。
「うん、いろんな物見えたりするから変な事させようって狙う人はいるよ」
「そっか……」
骸が眉を寄せる。
「……最悪、その世界に無理矢理入り込もうとするかも知れませんね。何を仕出かすかわかりませんから」
「そんな!」
「あ! なぁなぁ、そこってどんな世界なんだ?」
山本が軽い調子で質問する。だが選ばれし子供達一同は困惑した表情で顔を見合わせた。
「……あ、聞いちゃまずかったか?」
「太一さーん、やっぱ隠したままじゃ無理だってー」
「じゃあ大輔説明してみろよー」
「えぇー……」
「……? どういうことだ?」
太一達は、データで出来た生命体“デジモン”や、その世界“デジタルワールド”について説明した。
「わか……りまし、た……?」
「まぁ、大体は……」
「要するにデジタルペットみたいなもんか?」
「はい、それが知能と意志を持ったものだと思ってもらえれば」
「戦闘能力はあるのか?」
「あぁ。強いのから弱いのまでいるけどな」
そこで京子が気付いた。
「! それって人間次第でいくらでも悪用できるってこと!?」
「そうか! もしそうなったら……」
「人間次第どころか、デジモン達の中にも悪い奴はいっぱいいるよ」
「えっ……」
「デジモン達の知能は人間並、もしくはそれ以上です。悪いことを考えるデジモンも少なくはないんですよ」
「生まれつき“悪”として生まれるデジモンもいるし」
「へぇ……」
獄寺が腕を組んだ。
「っつーことはだ。白蘭と悪いデジモンがつるんだらやべーってことだな」
「そうなるね」
「岳君……そんなあっさり……」
髑髏が光子郎を見る。
「デジタルワールドとは自由に行き来できるの?」
「ゲートさえ開けばいくらでも出来ますよ」
「あれー、ねぇ光子郎、今って僕達のでも開けられるんだっけ?」
「そのはずですよ」
「何がですか?」
ハルが尋ねると、光子郎は正方形の液晶が付いた、万歩計玩具のようなものを取り出した。
「“デジヴァイス”といいます」
「俺達と、パートナーデジモンを繋ぐもんだ」
「端末としても使うけどな」
「パートナーデジモン……」
「私たちの半身のデジモンよ。1人に1体ずついるの」
「1人1体……それってハル達にもいるかもしれないって事ですか!?」
「そうかもな」
「すごーい!」
手を取り合ってはしゃぐ京子とハルに微笑ましい目を向け正面に戻すと、大輔が先程のデジヴァイスとは違う形の端末を差し出していた。
「これは?」
「“D‐3(ディースリー)”。ま、よーするに新型デジヴァイスだ」
「新型?」
「1期と2期で形が違うんだよ。役割も違うしな」
「へー」
「役割?」
「さっき言ったゲートは、このデジヴァイスやD‐3で開くんだ」
「あぁ〜」
「発信機、受信機にもなったり、パートナーの進化をさせたりもするんだぜー」
「……進化……?」
「成長のレベルが1段階以上上がるんです」
「で、強くなる」
「ふぅん……」

太一が腕を組んだ。
「しっかし……デジタルワールドが狙われてるとなると……」
「一度四聖獣に話を通した方がいいですよね」
「でェ〜っ、4ヶ所回んなきゃねぇの!?」
大輔ががしがしと頭を掻く。それを賢が苦笑して見ていた。
「あの……八神さん」
綱吉がおずおずと口を開く。
「何だ?」
「俺達も……デジタルワールドに行けませんか……?」
「っえ!?」
「事情を説明に行くんだから、俺達当事者がいた方がいいだろ?」
「そりゃ……そうなんだけど……」
「デジヴァイスが無いとデジタルワールド行けませんからねぇ……」
「あぁ……」
綱吉達が諦めかけた時。
「あ、じゃあ用意してもらいますから行きましょうか」
「え! い、いいんですかそんな簡単に!」
「大丈夫ですよ。どうせ上司は僕らの親ですから」
笑顔で答える光子郎に拍子抜けする一同。ミミだけが呆れて大きなため息をついた。


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