3 いきなり、背後から落ち着いたテノール声が降ってきた。 振り返ると今年クラス委員長になった、東雲拓真。 「ちゃんと2年も入学式に参加するようにとプリントに書いたはずだが?」 仁王立ちで、冷ややかに言う東雲。眼鏡の奥に映る瞳は、吸い込まれそうで漆黒に染まっていた。 「…透矢、行くぞ」 「は?ちょっ、朋季っ?!」 一歩も動かない俺の腕を引っ張って立たせる。 俺は折角のサボりに機嫌を損ね、すれ違い際に東雲を睨んだ。 「………」 ◇ 「なぁ、本当に入学式なんて出るのか?」 「しょうがねえだろ?委員長の言うことは絶対なんだから。しかも俺らのクラスの」 東雲拓真。俺たちと同じクラスで、委員長をやっている。頭も良く、運動神経抜群な完璧野郎。 …………。 「チッ……」 「ほら、体育館行くぞ。…透矢?」 「俺は教室で寝る」 「はぁ!?お前正気かよっ!あいつにまた見つかったら……」 「放せっ!何でいちいち言うこと聞かなきゃならねぇんだ?俺たちには関係ないだろ」 「でもあいつはっ……」 肩に置かれた手を振りほどき、踵を返す。 . << |