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雨音 /フラン


暗闇のなか雨音と壁に取り付けてある時計の音だけが響く。

ベッドに潜り込み数時間が経とうとしていたところ小さな振動で目が覚めた。どうやら枕元に置いてある携帯電話が振動を繰り返しているようだ。

私は頭までかぶっていた布団を少し捲り音のする方へと腕を伸ばす。

「はい…」

『あ、寝てましたー?』

はっきりと目も開けられず、手探りで通話ボタンを押すとどことなく気だるそうな声が聞こえてきた。

「フランか…どうしたの?」

『いや特に用はないんですけど、なんとなく声が聞きたくなっちゃいましてー』 

「何それ。フランはそういう台詞似合わないよ」

『厳しいですねー。まぁ本当は電話なんかより直接会いたいところですけど』

電話越しに聞こえてくる雨音は自分が今聞いているものより幾分か大きく、フランの呟いた言葉はそれに掻き消されてしまいそうなものだった。

普段から生意気なこの男が珍しく誰かに甘えるようなことを言うものだから何かあったんじゃないかとも思ったがどうやらそういう訳でもなさそうで、雨がこの男をそうさせているのだろうかと少し不思議な気持ちになる。

『じゃあ切りますねー』

「あ、フラン」

『何ですか?』

「風邪引かないようにね」

電話の向こうの男が小さく笑った気がした。声に出して笑ったのではないが、電話越しに伝わる雰囲気でそう思った。

『わかりましたー。おやすみなさーい』

「ん、おやすみ…」

電話を切り再び布団を頭までかぶる。しんとした部屋には相変わらずしとしと、と雨音が響く。

そんな雨音を聞きながら尚も降り続ける雨が明日は止むようにと祈りながらゆっくりと目を閉じた。


100323


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