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10万打フリー企画[12/06]
◆watch me ONCE again
>>ディヒバ。シリアス後甘い。翔様リク。




どうかもう一度…、


僕を見て―――――?




■watch me ONCE again■□■



僕の耳に入った知らせ。それは僕を闇に突き落とすには十分過ぎる程に残酷な知らせだった。


“ボスが撃たれて重傷だ。”



電話越しに聞こえるロマーリオの声は色んな感情を押し殺したように少し震えていた。言葉なんて出ない。喉がカラカラに渇いていた。無意識に動き出した足が向かうは勿論、生死を彷徨っている愛しい恋人の元。ただ何も考えることなく、僕は無我夢中で走っていた。










「日本に着いて直ぐに、こっちに潜んでいたマフィアにやられたんだ。」

ディーノのいる病室の前の廊下。俺達がついていながらっ!悔しそうに話すロマーリオ達は平然を取り繕うのに必死だった。握られた拳が震えている。僕はそんな彼等にかける言葉さえ見当たらずに、ただ現実を飲み込むことで精一杯だった。

ガラッと音を立てて開けた白い扉。そこから覗く白いベッド。ゆっくり、ただ確実に一歩一歩を踏みしめて、僕はディーノの側へと歩み寄った。

いつもの寝顔と何ら変わらない表情で眠りについているディーノ。呼吸をしている彼を見て、一先ずホッと胸を撫で下ろした。ディーノの逞しい刺青の入った腕には似つかわしくない点滴のチューブが伸びている。



「ねぇ、目を覚ましてよ。」

ボスが部下に心配かけてどうするのさ。頬を触れば温かくて、すぐにでもおはよう、とまたあのキラキラと眩しい笑顔が見れそうな気がした。そんな安易な期待が叶うはずもなく、横たわった彼の手を握り締め、隣で浅い眠りについた。



****


「…ん、」

何かが動く気配がして目が覚めた。ぼやっとする意識が覚醒したのは、手を握っていた彼が座っていたから。


「っ、ディーノ!」

思わず我を忘れて大きな声で呼んでしまった彼の名前。ビクッと彼の大きな体が揺れた。ゆっくりとこちらに振り向くディーノ。僕の声にロマーリオ達もドタバタと病室に飛び込んで来た。開いた彼の綺麗な瞳を見て、病室にいた全員が心から安堵の表情を浮かべる。


「ボスっ!」
「心配かけさせんで下さいよ!」
「体の具合はどうッすか!?」

ロマーリオ達の声が僕の頭の上で響いた。いつもなら大嫌いな群も、今日ぐらいはいいかと微笑ましく思える。ディーノはハッと自分の状況を理解したのか慌てた顔をした。

「…!わ、悪ぃ。心配かけちまって…。」

でももう大丈夫だ、といつもの笑顔を見せてくれた。そうか、と部下達は漸く少し落ち着けたようだった。そんな彼等を見て零すディーノの笑顔。笑顔の連鎖が起こる。


恭弥がずっと看病してくれてたんだぜ?とロマーリオは僕の頭をぐしゃっと撫でた。ロマーリオの大きな掌が僕の髪を乱した。





ただ、ディーノの台詞に乱されたのは僕の心だ。
















「…お前誰だ?」

ディーノが何を言っているのかわからなかった。予想だにしないディーノの台詞に戸惑う僕と、ざわつく病室。


「…何の、冗談?笑えないんだけど。」
「ずっと看病してくれてた奴にそりゃねぇぜ、ボス。」



「…えっと、知り合いだっけか?」


悪ィ悪ィ、と頭を掻くディーノ。冗談を言っているようには見えなくて、眩暈がした。眩しい笑顔がただただ僕を締め付ける。






ディーノは、僕を忘れてしまったんだ。


そう察したとき、全身の力が抜けきった。体が怠くて、重たかった。ズキズキと頭が痛んだ。込み上げてくる感情は、何?


大丈夫か、恭弥?と気遣うロマーリオの声。平気、とだけ返した。でもロマーリオの顔なんて見れる訳はなかった。大丈夫な筈がなかったから。泣きそうな自分を必死に抑える。ずっと握り締めていた彼の手をそっと離した。伝わってきていた体温が、途切れる。



「…あなたは、僕を愛してたんだよ。」

僕の言葉はふわりふわりと宙を舞う。きっと彼の心の中までは届きはしない。それでも今の僕には僕の想いのたけを彼に叫ぶしかできなかった。必死に足掻く僕は、なんて僕らしくない。


何言ってんだ、お前?とディーノの言葉が胸に刺さる。今のディーノにはただの自惚れた子どもにしか見えないんだろうな、と苦笑いを零す。僕は嘘は言わないよ、だなんて強がりを口にするけれど、今にも僕の心は折れそうだった。



「でもね、―――、








僕はあなたをそれ以上に愛してる。」




ちゅっ、と触れるだけのキス。

ぽたっとディーノの手の甲に落ちた雫を見てハッとした。ポロポロと自然に零れ落ちる雫は、もう止められない。漸く僕は、泣いていることに気付く。

これ以上はここにいられない、と思った。高ぶった感情を抑えられない。今にも泣き叫んでしまいそうに悲しみの波が僕を押し寄せてくる。


くるりと踵を返して、足早に出口を目指す。涙を拭う手がひんやりと僕の顔を冷やした。















「―――恭弥?」



足を一歩進めた刹那、引き戻された僕の体。掴まれた僕の手首に感じるのは温かい体温。耳から離れない聞きたかった僕の名前を呼ぶ優しい声。


ゆっくり振り返ると、そこには優しい表情を浮かべたディーノ。




「…き、恭弥ッ!?お前、何泣いて――」


慌てるディーノと、思い出したのか、ボス!と自分のことのように笑う部下達。暗い暗い闇に光がさしたようにみんなの表情も明るくなった。押し黙り俯いた僕を恐る恐る覗き込むディーノ。そんな彼に気付いた僕とディーノの視線がパチッと合った瞬間、それが引き金となり抑えていた感情が一気に溢れ出た。




「…う、あぁぁッ、ン――!」
「――ッ!恭弥!?」


今まで生きてきた中で一番じゃないかと思うぐらいに、泣いて泣いて泣きまくった。コップから溢れた水が止まらないように、僕の涙も止まらない。涙は枯れると誰かが言っていた気がするけど、僕の涙は枯れることを知らなかった。

ディーノの大きな手が僕の頭を撫でた。ディーノの逞しい腕が僕を包んだ。


そして、ディーノの優しい声がまた僕を取り巻いた。








「…愛してるよ、恭弥。」







*fin*





●ァトガキ●○●

10万打フリー企画第5のお題『ディヒバ。シリアスで恭弥が泣く。最後は甘い。』でした。翔様リク,ありがとうございました!

記憶喪失ネタです。ずっと書いてみたかったネタなのに…何か無理矢理感いっぱいです;笑;

よろしければお持ち帰り下さい。

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あきゅろす。
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