Reborn★Short
LoveLetter
>>ディヒバ。切ない系。死ネタ注意。
こんな僕を、
好きになってくれて
ありがとう。
■LoveLetter■□■
白いベッドに身を任せるように座る。ぼんやりと見つめた窓の外では太陽の光に反射してキラキラと煌めく緑色の木々が風に揺らめいている。そのとき、カラカラと開いた扉に異常に反応してしまう僕。期待通り、そこにいたのは太陽よりも眩しい人だった。
「具合、どうだ?」
目が合って早々に眩しい笑顔。僕を気遣うディーノの台詞にキュッと胸が締め付けられる。弱気な自分を見せられる訳もなく強がる僕をディーノはいつも優しく包んでくれた。今もくしゃっと彼の大きな手に撫でられた僕の頭は少しだけ熱を持つ。
「ただの風邪だよ。」
あなたは心配性だね、と笑えばディーノもまた少し困ったように笑う。そのままベッドの側にあった椅子に腰を下ろしたディーノ。また少し痩せたんじゃないだろうかと思う。ただでさえ忙しい彼は僕が入院してからというもの毎日この病室に訪れてくれている。あなた仕事は大丈夫なの?と問えばキョトンとした表情を見せてまたニカッと笑った。
「お前は人の心配より自分の心配しろよ。」
笑ってはいるが、やけに真面目な彼の目が僕の胸に突き刺さる。そんな彼の目から逃げるようにロマーリオ達が可哀想だね、と話を反らした。苦笑いを浮かべるディーノを見つめて僕は眠りについた。僕はいつだってディーノに甘えていたんだ。
****
「恭弥ッ―――!?」
バンと病院では有り得ない大きな音を立てて開けた扉。その先には黒いスーツを身に纏ったツナ達が一つのベッドを取り囲んでいる。俯く彼等を取り巻く雰囲気はどこか緊迫しているようにさえ感じられる。
荒げた息を整えて、カツンと一歩を踏み出す。
ツナ達が囲むベッドに眠っているのは、恭弥だ。綺麗な表情で目を閉じている恭弥の安らかな寝息は、どんなに耳を澄ませても聞こえなかった。
「さっき、息を引き取られました。」
泣きそうに震えるツナの言葉が受け止めたくない真実を突き付ける。信じられない、信じたくない。だってこんなにも綺麗な表情をしてるじゃないか。ふっと触れた恭弥の冷たい頬が、俺の思考の逃げ場を無くした。
「そう、か…。」
強がりとは違う。涙は出なかった。愛おしくて愛おしくて仕方なかった人が冷たく横たわっているのに涙さえ出ない俺はやはり汚れている。沢山人を殺めた俺には、涙さえ神様はくれないらしい。
ズッと鼻を啜り、静かに涙を流す彼等はとても綺麗だ。
一番泣いていた山本は、俺を小さく睨みつけて病室を出ていった。
「これ。」
そう言って差し出された白い封筒。ツナは真っ直ぐに俺を見つめて口を開いた。
「雲雀さんからです。」
恭弥から?浮かんだ問は声にはならずに俺の中で静かに消えていった。何の飾りもないシンプルな白い封筒。これを受け取ってしまえば、恭弥との繋がりが全て終わってしまうような気がして躊躇してしまう。そんな俺の胸にツナは封筒を押し付けた。
「俺はあなたを最期まで越えられなかった。」
最期の最後まで雲雀さんはあなたを…、
言いかけた台詞をツナは飲み込んだ。押し付けられた封筒はツナの手を離れてスルリと床に落ちた。ツナの言葉は痛々しい程に胸に浸透していく。病室を出た山本もきっと同じ思いをしていたんだろうな、と思う。ツナはそのまま黙って病室を後にした。
床に落ちた封筒を拾う。こんなに近くにいるのに、恭弥を感じることができない切なさが頭をぼんやりとさせる。封筒を開けばそこにはやはり手紙が入っていて。こんなに近くにいるのに、恭弥の声が届かないことを改めて痛感した。
白い便箋には黒の綺麗な文字が並んでいる。
ディーノへ
改まってあなたに手紙を書くときがくるだなんて、思いもしなかったよ。あなたがこれを読んでいるということは、もう僕はあなたの側にはいないんだろうね。
いつか行った街で流行っていた病に負けてしまったみたい。負けを認めるのは悔しいけれど、こればっかりは仕方ないね。風邪なんかじゃないこと、わかってたんでしょ?
ごめんね、辛いのは僕だけじゃないのに。あなたの優しさに甘えていたよ。
でも、この病に少しだけ感謝したこともあるんだ。毎日あなたに会えたから。忙しい中を毎日会いに来てくれたあなたが嬉しかったよ。仕事をちゃんとこなして会いに来てくれていたのを知ってたよ。ロマーリオ達が可哀想だなんて意地悪を言ったけど、彼等はあなたみたいなボスで幸せだね。
…僕はずるいね。文字でならこんなにも素直になれる。最期ぐらい、あなたに言葉で伝えればよかった。小さな後悔が残ってしまったよ。
ああ、違う。こんなことが言いたいんじゃないんだ。
ありがとう。
こんな僕を好きになってくれてありがとう。
こんな僕を愛してくれてありがとう。
僕を忘れないでなんて言わない。この手紙も読み終わったら燃やしてくれて構わない。
どうか、幸せになって。
あなたは優しいから。きっと僕を思って悲しむでしょう?でもそれは僕も悲しいから。
どうか、笑っていて。
僕の最後の我が儘を、許してね。
恭弥の手紙を読み終えたとき、漸く気付いた。俺は泣いている。ポロポロと不思議なくらいに溢れ出る涙は頬をつたって恭弥の文字の上に落ちる。恭弥の文字はじんわりと滲んで染みを作る。
なあ、恭弥。今日だけはどうもお前の我が儘を聞いてやれそうにない。今日だけは許してくれるよな?
「…ぅッ、俺からも、ありがとう――ッ。」
愛してるよ、恭弥。
冷たくなった恭弥の唇に最後のキスを落として、俺達の恋は終わった。
でもな、恭弥。
俺達の愛は続いていくよ。
*fin*
●ァトガキ●○●
久しぶりに書いたカラ,いつも以上に纏まらん…;;しかも久々が死ネタって(^^;笑)
山本がディーノを睨んだのはツナ様と同じ気持ちだったから。言葉にすれば叫んでしまう自分を必死に抑えたんです。きっと。恭弥は愛されてるんです。
ありがとうございました。
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