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08 午前0時のエスケープ


甲板の端、日向の気持ちが良いそこは大体おれかエースがいた。張り付いてくる子供のように、もしくはそれ以上に熱い体温。ここのところ性欲が満たされていないからか、何気なく抱きついてくるエースのそれにですら意識してしまう。真っ昼間からそれはいくらなんでも衛生的に良くないよなあ、と自身のよりも高いところにある肩を押し返すと、むっと不服そうに唇を尖らせた彼は、なんでだよとおれを咎めた。むらむらするから、なんて言葉は飲み込み、熱いだろともっともらしく説明し返せば、大人しく引き下がったエースは、やっぱり仏頂面のまま。しかし、こんなやり取りは日常茶飯事だから気にはならない。不意におれ達のことなど目もくれず、目の前を通り過ぎていくマルコ隊長を半ば無意識に視線で追っていると、隣でエースが溜め息を吐いたのがわかった。今日も実らない片想いにおれは翻弄されている。

やっぱり一日一回は喋れるようにしたいと思い立ち、おれはマルコ隊長の近くに駆け寄った。おれを見つめる青色の瞳に心臓を射抜かれすべてを持って行かれてしまうような感覚に落ちる。おはようございます、と言うよりも先に後から追いかけてきたエースが勢いよくマルコ隊長の肩を叩き、おれよりも先に元気よく挨拶をしてしまった。格の違いというか、仲の良さを見せつけられたようで心が折れそうになるが、続けて挨拶をすれば、笑うでもなく拒絶するでもなくただ細められた青色はおれを見た。



「おそよう」



ああ、もしかしたら今日は機嫌が良いのかもしれない。思わず緩む頬をそのままに笑い返すと、マルコ隊長の腕が伸びてきておれの頬に触れる。壊れてしまいそうな心臓に歯を食いしばりマルコ隊長を見上げれば彼は、顔色が良くなったじゃねえか、と小さく笑みを浮かべた。なんて破壊力。あまりのスピードで鼓動する心臓に、息が苦しく、眩暈を覚えた。自分でもわかる程に熱が上へと登ってくる。こんな風に優しくされるとどうしたらいいのかわからなくなってしまうなんて、本当自分の恋愛スキルのなさに心底笑えた。



「ナマエってさぁ」



本当にマルコが好きだよな、と遠ざかっていくマルコ隊長の背中を眺めながらしみじみとした様子でエースが呟いた。何を今更そんなこと、と思い彼を見上げれば彼はナースたちから太陽みたいだと形容されている笑顔をおれに向けた。うん、おれも太陽みたいだと思う。けれどエースはナースやサッチたちが思うほど子供ではないのだ。少し乱暴で、子供っぽい時もあるけれど、案外打算的で頭もよく使う。つまりこの笑顔には裏があるのだ。そのせいでなめてかかるとたまに痛い目に合うけれど、彼のそういう欲に対する執念と現実的なところをおれは気に入っていたりする。自分とは真逆なタイプの人間だ。だからかは知らないが体の相性もよかった。少し前まではおれの隊の隊長ということもあり、しょっちゅうセックスをしていたけれど今はしていない。エースだって男だし、幸い言い寄ってくる相手だって少なくないのだからおれ一人がいなくなったところで、彼の性生活にはさほど変わりはないだろうと思っていた、今思えばそれが酷い間違いだった。




08.午前0時のエスケープ





夜、だけれど夜の闇は見えない。夜よりも暗い闇が自身の視覚を覆った。わかる感触といえば身体を這い上がる手のひらだけだ。一体どういうつもりなのかなんて聞く必要もないが、それを享受することはできなかった。身を捩りエースの腕を掴み引き剥がすが、エースはさっきから一言だって喋らない。両目を覆う布を取り払おうとしても、それよりも先に腕を一つに纏めとられてしまい、頭上で縛り上げられて身動きがとれなくなる。しまった、と焦りを覚えた時には暗い闇の中で唇を奪われていた。激しく貪るようなそれに上手く呼吸もできず、何も見えない視界で妙にはっきりとした感触だけが、恐怖を煽る。せめて、何か言ってくれやしないかとシーツの上をもがき深い口付けから逃れると、エースの動きがぴたりと止まった。切れ切れに一体どういうつもりなのか、と問いただすと酷く無感情な声が、つまり、と言葉を続ける。こんなエースの行動は初めてでおれの中の恐怖は膨らむばかりだった。



「おれなりの譲歩だ」



マルコのことでも想像してろ、と吐き捨てた彼は性急におれから服を剥ぎ取っていく。太股を掴まれて咄嗟に閉じようとしたそこを無理に大きく広げられ、自身の後孔が空気に晒される感覚に鳥肌が立った。動けない。ここしばらくずっと耐え続けてきた性欲を歯止めする意志が、あまりにも脆く崩れ出す音が聞こえる気がした。後孔を撫でていただけのエースの指が、ぐりぐりとおれのナカへ押し入ってくる。痛みと快感に腰が飛び跳ねると、暗闇の向こうで、エースが小さく笑った気がした。急な異物感に息を詰め、遠慮なしに抜き差しされるそこに快感が増していく。おれの腹の上は、ぽたぽたと熱い先走りが濡らし始めていた。増やされた指はおれのナカを好き放題に掻き回し、ぐちぐちといやな音を立てながら自分でも戸惑うほどにヒクつき、エースの指に吸い付く。奥を指先で抉られるたびに、熱は今にも弾け飛びそうだった。



「あっあっああ…!えーす!んんっ!」



イく、と言おうとした瞬間、勢いよく引き抜かれた指に、おれの身体は抜けない熱と足りない快感に頭がおかしくなりそうになった。ゆるゆると内股を撫でつけられてもどかし過ぎる快感に、縋るような鳴き声をあげてしまう。ふん、とわずかに笑った彼は、再びおれの奥深くへと指を突き入れた。前立腺を激しく擦られて一気に身体から熱が溢れ出したが、達したにも関わらずエースの指はおれの感じるところを痛すぎるほど強く突き立てるものだから、おれは必死に頭を振って謝った。しかし、彼の指は激しさをますばかり。びりびりと痙攣するおれの身体は再びすぐに無理矢理イかされようとしていた。抑えられない声。目を覆う布が自身の涙で重さを増す。再び絶頂を迎えた時、エースがおれの耳に噛みついた。




「マルコだと思えば痛くねぇだろ?」






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