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10 呆れるほどのキスで起こして



「おれ…っ、さいてい、だ」

「ああ、…そうだねい」



だからもっと力を入れろ、とおれの肩でいまだに泣いているナマエのナカへ指を突っ込みエースの吐き出した精液を掻き出してやる。一体何回ヤったのか、何度でも溢れ出してくる白濁色に、自分以外の男のそれに触れるだけでも煩わしいというのに、重ねてエースの若さを見せつけられたようで気が滅入った。ぬるぬるとしたナカで指を拡げて重力に従って落ちてくるそれは自分の指の間とナマエの白い太股を伝っていく。ナマエを抱えたまま更に奥まで指を差し入れ指の関節を曲げると、懺悔を並べ立てていた身体がぶるりと震えた。最低でもなんでもやっぱり本能には勝てないらしい。おれの肩に爪を立てたナマエは、震える膝でかろうじて立ったまま甘い吐息をかみ殺した。相当ヤったに違いないのにまだ元気があるのか。おれは内心これで一人で処理しなくて済むと安心した。猫のように頭を擦りつけるナマエが、半泣きのままおれの名前を呼び、おれの熱が中心に集まってくるのがわかる。最低なのはおれも同じだった。



「ひっ…まるっ、たいちょ、う!ンぁ!」



指を抜いて、自身の性器を取り出しナマエの後孔にあてがう。もはや誰のものかもわからない精液で濡れたその入口に数回擦りつければ、おれの首元に縋りついたナマエは鼻に抜けるような息を吐いて、切ない声をあげた。細い腰を支えたままゆっくり腰を落とさせる。絡みついてくる熱いナカに息を詰めて射精感をこらえるが、ナマエのそこはお構いなしにおれの性器に吸い付いてきた。やっと一番奥まで飲み込んだ彼は、赤くなった目元をくしゃりと歪ませて下手な笑みを貼り付けておれを見る。この笑顔が嫌いだ。ナマエはおれを前にしたときいつも無理に笑おうとする。いつもこの笑顔はおれを苛つかせた。けれど、ナマエにこの顔をさせているのはおれなのだ。涙の跡が残る頬を指で拭って濡れた唇に吸い付いけば、ぴくんと震えたナマエの身体はおれの性器をきゅう、と締め付けた。素直なやつだ。

唇を深く重ねあわせたまま下から突き上げると、ひゅっと首筋を反らしたナマエは、声にならない悲鳴をあげた。たまらず繋がったまま抜き差しを繰り返せばベッドのスプリングが軋み、ナマエがふるふると頭を振る。おれの首に回された腕に力が入り、無意識にか、密着するように身体を寄せたナマエはおれの肩口で喘ぎ声をあげ、途切れ途切れにおれの名を呼んだ。



「ナマエ?」

「ん!ン!…す、き…すき!!」



その言葉に、がくがくと押し付けていた腰が思わず止まる。そのせいでナマエは苦しそうに自らゆるゆると腰を揺らして快感を求めていたが、構わず繋がった状態のままおれはナマエをベッドへ押し倒した。たったそれだけだが、奥を抉ってしまい一際高い声を発したナマエは白濁色を吐き出しあっけなく達してしまう。荒い呼吸に溶け出しそうな瞳。汗で頬に張り付いた前髪を払い酸素を取り込もうと深呼吸を繰り返す唇に自身のものを重ねると、涙の膜が張った瞳を嬉しそうに細めたナマエは、夢みたいだ、と呟いた。





10.呆れるほどのキスで起こして





ああ、朝だ。働かない脳内で記憶を巡らす。確か昨夜はナマエと寝て、そのまま抱き合って、そこまで思い出しておれは目を開けた。まだ外は騒がしくないから船員たちも寝ているのだろう。自身の横にはいつもはない温度がそこに確かに存在している。目線だけを向けて横を見ればナマエがシーツに丸まって寝息を立て眠っていた。まあ彼がいるのは当たり前なのだけど、妙な緊張と少しの罪悪感と、らしくもなく幸せを噛みしめている自分に頭を抱えたくなった。昨夜の熱、彼の笑顔、すべてをはっきりと思い出すことができる。幸せそうに眠っているナマエの顔から目を離せないでいる自分がどうしようもなく恥ずかしくなった。こんな、思春期の子供みたいだ、と。自身とは正反対の色をした銀髪を腕の中に抱き寄せて唇を落とすと、ゆっくりと持ち上がった瞼の奥、金色の瞳をゆらゆらとさせながらナマエが目を覚ました。眠たそうに瞬きを繰り返す瞳がおれを捉えるとふにゃりと笑みを浮かべるものだから、つられて笑い返す。幸せそうに笑ったままナマエは再び瞼を下ろした。



(寝んのかよい)



笑みを形作ったままの唇に優しく自分のものを重ね合わせれば、ナマエが小さく笑うが、瞼は持ち上がらない。もう一度音を立てて唇に吸い付き離れてみるがやはり起きないナマエに、今度は唇を甘噛みしてみる。三度目のなんとやらで再びゆっくり瞼を持ち上げた彼は勢いよく跳ね起きた。シーツもおざなりにパクパクと口を開閉させておれを凝視する彼がなんだかおかしくて笑うと、頬を赤らめたナマエは自身の額を押さえて俯く。そんな姿に笑いつつも、一つの嫌な予感が頭を過ぎった。まさか、昨夜の出来事をすべて忘れ去っているのではないかなんて確率だ。ナマエの第一声を待っていると、彼は頬を赤らめたままもぞもぞとシーツを引き上げ、自身の顔を覆って膝を抱えた。



「夢、かと思った」



わずかに聞き取れた小さな呟き。ナマエの銀髪から見えた真っ赤な耳に胸が熱くなり、おれはシーツごとナマエの体を腕の中にかき抱いた。たったこれだけの事に随分と遠回りをしてきた。本当に一緒にいるべきだったのはおれでいいのだと、一緒にいるべきなのだと教えてくれる。もう一度キスをしてから起きようと思いナマエの頭を撫でると、騒がしくなりはじめた部屋の外の喧騒に混じって、すぐ扉の前でぎゃあぎゃあと言い争っている二人分の聞き慣れた声に苦笑が漏れた。ナマエの幸せを確かめにたのか、それともおれを冷やかしにでもきたのか、何にせよ少しもしないうちに部屋の扉が勢いよく開いた。





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あきゅろす。
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