──27
◆ ◆ ◆

…なんだ、コイツは…
やっと暴れん棒をけしからんケツから抜くと、赤いヒダから白い粘液がゴボッと漏れた。
すげェ。やった、やったぞ。
俺はついに狐と交尾した!!種付け成功!!!抜かずの3発!!
実に2008年11月11日より11年ぶりの誓願成就…!!

俺は泣いた。
涙を遠慮なく流した。
どっかの世界でミホークに大敗した時よりも泣いた。

いや感無量している場合じゃねェ。
袖でゴシゴシ顔をぬぐい、崩れ落ちた肢体に手を伸ばす。
「大丈夫か?」
抱き起こすと青い眼が泳いでいる。
「…クソ、野郎…少しは手加減を、知れ」
蕩けた面とかすれ声に再びゾクリとマラが勃つ。

「悪ィ。おかわり」
「…!?ちょ、まて、おま、三回も…」
「足りるか!!11年分やらせろ!!」
「リアルの時間換算すんな!ワンピー〇のように3日を5年とか言うな!!」

問答無用。
むんずと両足を掴み開き、トロトロになった穴を穿つ。
「ああ…!!」
このカマトトが。中は正直でじゅぶじゅぶ吸い付いてきやがる。

今度はチンぐり返しでガン掘りする。
悶える顔が見れて、最高でござる!至高でござる!!
「お前、こんな…一生食い続けてやる…」
「クソ、も、また、やだ、ああ、クルっ…!」
大袈裟に裸体が跳ねる。
ピンクのチンポは震えるだけ。

…ドライいきってやつか?
才能ありすぎだろコイツ。
つかマラが吸われ過ぎて俺もすげぇ出た。玉が痛ェ。でもしてェ。

四十八手やり尽くしたってくらいヤった。
狐はドライでイキすぎて半ばトリップしていたが、外で一番鶏が鳴く声で我に返った。

「も、限界…むり、勘弁…」
「まだまだぁ!!」
「──ッや、め、ろおおおおおお!!」

ボンっ!と音がして青い炎が視界に広がる。
「うおっ!」
思わず腕で顔を覆い尻もちをつく。熱さはない。
「…?」
腕を下し右目を開けると…

あれ?いねェ。
あいつ、目くらましでどっか消えやがったな!?
立ち上がりきょろきょろ周りを見るが、あのハレンチな姿はどこにも無い。

「ぐるるる…」
ん?
聞きなれない唸り声に下を向く。
そこには金色の獣…狐…狐、だよな?
その眉はなぜか巻いていて…

「お、おまえ…まさか、サンジか?」
こいつ、獣型になるの忘れたとか言ってたのに──

前かがみになった狐はこっちにジャンプし、俺の股間へ──
「ぎゃあああああああ!!!」
マラをがぶりと噛んだ。

「おま、ぐおおお…」
倒れもんどりをうつ俺を踏みつけ、四つ足の狐は部屋を飛び出ていった。

や、やっと男に戻って、性交成功したのに……不能になるかも。

痛みと絶望とヤり過ぎに、俺はゆっくり意識が暗転するのを感じた…。


◆ ◆ ◆


9月に入った。
今年は猛暑だったが秋が来るのは意外と早いかもしれねェ。
先ほど夕立がきて晴れ間が覗き…雨が弱まる。
五輪の山の向こうに、虹がかかっているのが見えた。

冷やされた風が頬を撫でる。
縁側に座った俺は、強めに団扇を仰ぐ。
膝の上の獣の毛がその度めくれるが、気持ちよさそうにグルグルいってる。
まるで猫だな。

「…なぁサンジ…。百万遍でも謝るから、そろそろ戻ってくれねェか?」
大きな耳が片方ピクリとしたが、わざとらしく両方伏せられた。
──絶対通じてるだろコレ…。

初夜からサンジが獣型になってしまい、もう一週間近い。
ゼフ爺にも電話したが、
「病気じゃねェんだ。好きにさせとけ」
とにべもない。

確かに俺達狸族だって獣型に戻る時期もあるが、化狐族はそれを恥としている。
そんな恥ずかしい姿をずっと晒してるのに狐は意に介した風でもない。
むしろのびのびと獣姿を楽しんでるように見える。
昨日は庭で、蛙を追いかけてた。
それはそれですげー可愛いのだが…。

俺は長い溜息をつく。
「…貞操守るには、うってつけの姿だもんな」
流石の俺もこの姿には欲情しない。俺も獣型になれば解らんけども。
「悪かった。それだけお前がよすぎたんだ」
左の手で毛並みを撫でる。ふわふわで最高の触り心地だ。
でも…あの白い肌に触りてェ。
くるくる変わる表情も…クセのある声も…眉尻が下がる笑い顔も…うめェ料理も…
全部が恋しい。

湿気を含んだ風に風鈴が鳴る。
足元でバッタが跳ねて、俺の足に乗った途端、ぐ〜〜〜っと凄い音が鳴った。
そう言えば、飯も喉を通らず…今日は何も食ってねェな。

不安と空腹で柄にもなく超弱気になった俺は、膝の獣を抱き寄せた。

「腹が減った。サンジ…お前の飯が食いてェ」

やべェ。泣きそう。
スンスン…と鼻が鳴り、狐が首を回して俺と向き合う。
長い口先が、ちょんと俺の唇に付いた。

ボン!!っと音がして、ずしりと質量がくる。
うっすら目を開けると、飛び込んできたのは金色。…だけじゃない。
「さ、さ、さ…」
俺の腕の中には、黒いスーツ姿のサンジがおさまっていた。

しばらくアホのように呆けていたが、伏せた顔から青い眼がチラリと上目で見て、俺は人語を取り戻した。
「サンジーー!!!」
「ぐえーー!!!」
力任せにぎゅーっと抱きしめる。ちょっと骨が鳴る音がした。

「てめェこのアホ狐!どれだけ心配したかと!このまま戻らねェんじゃないかと…!うおおおお!!!!」
「ちょ、解った、はなせ、ぐるじぃ…」
股間に激痛が走る。
狐の膝がめり込んでいた。

「ぐおおおおお〜〜!!」
おまっ、やっと噛まれた、傷が、良く、なったのに…!
横倒しで悶える俺から逃れた狐は縁側の下に立ち、すばやくポケットから煙草を咥え火をつけた。
「ふーっ…まったくこの野獣は…」

久しぶりの狐の声に、一瞬痛みを忘れた。
サンジだ。俺の愛する狐ちゃんの姿だ。

「どう、して…」
「ああ?昔から、変身を解くのはキスって決まっておろうが」
内容はロマンティックなのに口調がサスペンス。
「いや、…なんで、全裸じゃねェ?」
「そこかよ!?何とでもなるんだよ、不思議設定で!」

狐はひょいと縁側に乗り、障子を開けた。
「今から米洗ってだし引いて…夕飯の時間には間に合うか」
振り返り、金色の髪の間から俺を見下ろす青い眼。

「…食べますか?クソ旦那様」

だんな、さま…

がばっと起き上がると、スタスタと部屋に入っていく、その首筋は赤い。
「当たり前だぁ!!!」
どこかの世界の麦わらに負けじと声を張り上げた。


その後、調理する狐にまとわりつき、
「俺は旦那、お前は嫁!!今日は狐の嫁入りイエイ!」
と小躍りしたら、蹴り出された。

その夜、久しぶりの愛妻料理と新妻を美味しく頂いた俺は、この世のすべてを手に入れた心持だった。
僕らは一つワンピース!!!

*****

人の一生は花のように短けれど、長い長い生を生きる者たちがおります。
彼らは上手く人間社会に溶け込み、面白おかしく暮らしているようです。

「ほら!こっちだって言ってるだろ、ちゃんと後ついてこい」
「うるせェ。広すぎるんだここは」

真夜中の教会に、白い姿と黒い姿があります。
タキシードを着た狐族当主と、紋付き袴の狸族当主です。

「…なんで教会なんだよ」
「うちは神道、お前は仏門。当たり障りないとこでこうなった。いーじゃねェか、ただのフリなんだし…」
「フリじゃねェ!今日は大事な俺とお前の結婚式だ!」

…そのようです。
イベント大好きな妖の仲間達が、何もしないのは寂しいと結婚式を計らってくれたようです。
衣装は百手と猫又が貸してくれました。
「サンジくんに似合うドレス、たくさんあるわよ!?」
と言われて泣いて断ったようです。

「着いた。用意はいいか?」
「おう。ホラ」
折った着物の腕を差し出され、狐は少し照れ臭そうに組みました。

重厚な扉がゆっくり開きます。
左右の席にはニコニコ笑う仲間達。
眠そうな麦わら帽子の少年、半泣きの天狗、大泣きの大工、海外から一時帰宅した子狸と外科医、美女二人、先代達、ドクターくれは…
狼族や赤鬼まで居ます。

バージンロードの奥には、神父姿の冥王。ノリノリです。
促され、2匹は歩みます。
緑と金色の尻尾は、仲良く触れ合っています。

少し赤くなった頬の狐を、愛し気に横目で見る狸。
教会の中は笑顔と愛で包まれておりました。


ここは古都。
どこかのお山の向こう側に、妖だけの別天地があると言われております。
大きなイチョウの生えた屋敷には、かつて犬猿の仲たる若者二人が、仲良く喧嘩しつつも暮らしているそうです。

時代は平成から令和になりましたが、お山は変わらぬまま。

二人の物語は、いつまでも続きましたとさ。


おわり
(19.9.20)















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