「……なーんでくんのぉー……」
「……来たくて来たわけじゃねぇよ」
 別に良いやとかさ、思っててもさー、プールが延々と何日も続くとほんとーにいやんなる。まーじで余裕こいて言える状況じゃなくなる。
 しかも親に嘘吐いてサボってんのに家に来られるとかほんとーーーに嫌だ。くんなバーカー。
「羽生てめぇ何回サボってんだで、水泳だけ」
「だってやなんだもん、しかたねーべした」
「おめぇが泳げねぇのがわりーんだべ、中学でダブりなんて聴いたことねーぞ」
「んな制度ないからだべやー」
「アホが、俺が怒られんだで。さっさとしろや」
「……いーやぁだぁー」
「行ぐぞ」
「いーやーって、いてえっ、なに殴ってんだおめっ」
「やだで授業無ぐなったら苦労しねーべした」
「いーやーだー!」
 バチン! って痛そうな音が聴こえた一瞬後に頬っぺたにじんじんと痛みが広がった。ちょーまてこらおーい、って間髪容れる暇なくおれもバチーンだよねそんなんね。いてーっつーの。
「ってー……」
 チッて舌打ちと共にギロッて睨まれるけどさー、こわくないよねー。いってーよねーおれも。
「おれもいてーもん」
「うぜえ」
「おまえもねぇー」
 ふんって顔を逸らせば今度はゲシッと玄関を蹴ってきた宗像、えーさいてー。こいつさいてー。
 あれっしょ、次は玄関先の靴蹴ってから庭の花壇蹴りに行くべおまえ、んで荒らして逃げておれがばさま(ばーちゃん)に怒られんだべ? つーかまぁそれ二年位前に同じ事があったからなんだけどね。えー勘弁まじ勘弁。
「さーいあぁぐ(最悪)だー」
「俺の役回りがな」
「……はぁ」
 玄関で溜息を一つ漏らせば、宗像は勝手にズカズカとリビングまで行って、放り出した水泳用具をご丁寧に持ち出してきた。
 おら、ってえっらそーに渡されてさーうわうぜーまじでぇー。
「やだもーおまえー、きらーい」
「もう知ってっからいーわそれ」
「すんげー嫌い」
「ハイハイ、俺も嫌ぇだっつの、泳げもしねぇでだっせーの」
「いーよーダサくて! 必要ないよー!」
「……」
 水着も貰わずに駄々をこねると、青筋の立った宗像が「……マジ殴りてー」って呟いたんだけど、聞き覚えの無いトーンに戦慄が走ったおれは、そこでよーやくピタッと動きを止める事が出来た。

 すき、きらい、すき、宗像ちょーきらい!







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